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小林一茶 故郷を捨てたのに遺産ふんだくるがめつさ

相続で長年もめたという(写真:AFLO)

 偉人といえども1人の人間。“カネの話”となると、途端に俗っぽさをのぞかせる偉人もいる。

〈雀の子そこのけそこのけ御馬が通る〉
〈痩せ蛙負けるな一茶ここにあり〉

 力の弱い者への同情や愛情を詠んだ句で知られる江戸時代の俳人・小林一茶だが、そのイメージとは違い、一茶は壮絶にして生々しい「相続トラブル」の主人公でもあった。『一茶の相続争い』(岩波新書)の著者で、国立歴史民俗博物館名誉教授の高橋敏氏が解説する。

「長野県の農家出身だった一茶は15歳で江戸に奉公に出ると、父が重病になるまでの24年間で2度しか帰郷せず、田舎への仕送りも一切しなかった。当時の常識では“相続権なし”と見なされるはずが、一茶は父の死の直前に帰郷して、死に目に立ち会い、その遺書により遺産の半分を受け取った。それに対して、半世紀近く実家や田畑を守ってきた継母と異母弟の怒りが爆発。村中を巻き込んだ相続争いに発展します」

 継母らに同情する村人から罵倒されても一茶は折れず、12年かけて遺産を手にする。さらに相続が決着するまで実家に住み続けた異母弟に12年分の家賃を請求するがめつさを見せた。

「一茶の記した『父の終焉日記』に父を献身的に看病した逸話があるが、自らを正当化するために相当脚色されていると私は見ています。一茶の性格は『雀の子』や『痩せ蛙』の作風とは真逆の、強欲な人物だったのではないか」(高橋氏)

※週刊ポスト2017年9月15日号

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