「今の段階で基本ができてないとしても、そんなものは意識の問題だし、プロでコーチが指導してやれば何の問題もない。肩もいいし、資質は申し分がない。構えやキャッチングは、本人が意識さえすれば簡単に進歩するよ」
ただ、気になるのは近年、ドラフト1位の高卒キャッチャーがことごとく結果を残せていないことだ。2000年代に入って高卒ドラ1捕手でレギュラーに定着したのは炭谷銀仁朗(西武)しかいない。
「高卒キャッチャーがぶつかる壁は、配球術だろうな。教えられるコーチがいないからか……」
◆「4つのペア」を駆使せよ
そう考え込む野村氏に、中村に伝えるべき「リードの極意」とは何かを聞いた。すると「根拠のないサインは出すな。それだけだ」と断言した。
「ここでなぜカーブを要求したかということに対し、ちゃんと説明できることが重要。無責任なサインは出すなというのが、オレの考えだ」
配球とはつまるところ「4つのペア」の組み合わせに集約できるという。外角と内角、速いと遅い、ボールとストライク、逃げる球(スライダー)と食い込む球(シュート)──。この4要素を材料に、相手バッターを料理するのだと野村氏は語気を強める。