「森さん、ここで買った靴は、アッパ(日本で世話をしてもらっているパパ)のとこに持っていけば、二倍で買い取ってもらえますよ」
六本木の人気クラブで遊んでいたソウル市出身の女性・ジョンファ(24)は「私は日本に留学に来ています。日本語を学んでビジネスをするのです」と、当初は自身が”留学生”であることを強調したが、後に売春目的で来日したことを明かした。
ジョンファと共にいた女性XとYも、同じく韓国出身で、同じ派遣型風俗店で働く同僚だ。大学卒業後、就職したものの賃金の低さや労務環境の過酷さに耐え切れずすぐに辞職。大学で日本語を学んでいた彼女たちは、ネット上で見つけた「日本で高収入のエスコート業務」という求人を見て応募し、すぐに来日した。
「エスコートがどういう仕事かはわかっていました。韓国の女性は、国内での身分が低いので海外に出たいという人が多いし、韓人女性が海外で体を売って刑務所に行くこともあると知っています。でも、日本はしっかり面倒見てくれるし、オッパも優しい」(ジョンファ)
酔っ払ったジョンファたちが「オッパ(お兄さん)」と呼ぶ彼女たちの世話係は、元在日韓国人で数年前に帰化した経歴を持つ高山氏(仮名)だ。風俗産業に従事した後、風俗店で働きたいという韓国人女性の斡旋や管理を行っている。高山氏へのインタビューは困難に思われたが、何度かの電話での会話を経て、筆者と会ってくれることになった。高山氏には、日本人に知ってほしい、ある「思い」があったのだ。
「彼女たちを悪く書かないでほしい──」
高山氏は開口一番に訴えると同時に、韓国人と在日韓国人の微妙な関係、そして不安定な日韓関係の中で暮らす韓国・朝鮮系の人々の状況について、次のように語ってくれた。
「まず、彼女たちは好きで売春しているわけではない。韓国には仕事が本当にない。そして私たちが彼女たちの面倒を見ているが、彼女たちの稼ぎの半分以上は、私や日本人の風俗関係者、悪い人たちが取り上げる。でもこれは仕方がないことで、それでも彼女たちは生活していくだけのお金を稼げます。いいことか悪いことはわからないが、こうするしかない。在日である私が韓国人をいじめているとか、韓人が日本で悪いことをしているとか、そういうことではない」
韓国の若年層における雇用率が低いことは前述の通りだが、女性雇用率も低い。15~64歳の女性雇用率は56.2%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(59.3%)より3.1ポイントも低い。これは加盟35カ国のうち、トルコ、ギリシャ、メキシコ、イタリア、チリ、スペインに次いで7番目に低い数値だ。新入社員の採用で女性を敬遠する企業文化が根強いことが影響していると言われる。