いくら韓国内が就職難だからといっても、やはり高山氏の発言は詭弁にも感じ、彼ら、彼女たちがやっていることといえば、日本国内で売春行為をしているにすぎない。違法行為に手を染めている人たちもいる。それでも高山氏はいう。
「日本はいい国だ。言いたいこともたくさんあるが、なんだかんだで受け入れてくれている。差別されているとは思わないし、思いたくもない。母国が助けてくれない事実も、頼れない事実も理解している。どう言えばいいのかな…。日本人にわかってくれ、という方が無理があるのかもしれません」
筆者は以前、韓国から続々来日する「韓国人売春婦」について、右派系論壇誌に寄稿した。読者からの反応は様々で、ネット上では特に、韓国や中国、そして北朝鮮に対して排外的な人々の思想を補完するような形で引用・拡散がなされた。
筆者の意図としては、日本に来て、または世界中で売春をせざるを得ない韓国人女性たちについて、韓国政府も世論も、なぜ見て見ぬ振りをするのか、問いかけたかった。
就職活動の失敗や、低賃金にあえぐ国内の労働者を見て絶望し、日本国内での出稼ぎ売春に励む韓国人女性たち。死ぬまで、日本やアメリカ、中国などを転々としながら身を売り続け、ついには祖国の土を二度と踏まぬまま、流浪の地で死ぬことになるのではないか、そんな不安を抱く女性もいた。
あれから何年も経った。大統領が交代したが、経済は相変わらずの低飛行で、2017年は大卒者にとって最悪の就職氷河期にあるという。朝鮮半島の緊張は高まるばかりで、明るい話題が見当たらない。若者たちみずから、母国の有り様を「ヘル朝鮮」と自嘲して表現するほど、生きづらくなった。しかも、韓国社会が若者たちにとって明るい未来を用意してくれそうな気配が見えない。人間らしい生活を送るための稼ぎを得るには、国を出ないとならないと追い詰められているのだ。
母国から遠く離れ、ときには法律すれすれの活動をして稼ぎ続け、苦しい中でもなんとか「韓国人」であるアイデンティティーを持ち、生き続ける人々。様々な矛盾はあるが、そこに厳しい目を向け、追求するだけでは何も解決はしない。彼らには、熱心に働く人がすくなくない。労働力人口の減少に悩む日本にとっても、プラスになる受け入れ方があるのではないだろうかと、保守的だと自認する筆者でさえ感じてしまうが、これもやはり「売国」とレッテルを貼られる考え方なのか。