国内

「化粧療法」 高齢者の脳の視覚野、運動野なども活性化

『化粧療法』は筋肉も鍛えられる(写真/アフロ)

 認知症がある83才の母を持つ本誌・N記者(53才・女性)。母に認知症の症状が出始めたころ、大きな変化の1つは、化粧をしなくなったことだった。する必要がなくなったのか、できなくなったのか、徐々に老人顔になっていく母。「認知症だから仕方ない」のか…? N記者が新たに体験した「化粧療法」を取材した。

 * * *
 女性にとって化粧はONとOFFのスイッチだ。そして、高齢者にもその“ON・OFF”が大切であることを、母を見て気づいた。長年、化粧や身だしなみが人に与える影響を研究し、介護施設などで『化粧療法』による美容教室や講座も行っている資生堂ジャパンの池山和幸さんに聞いた。

「『化粧療法』というと、笑顔が増える、気持ちが前向きになど、心理的効果ばかりと思われがちですが、実はもっと大きな力があるのです。

 スキンケアやメイクなどの化粧動作は、食事をするときの2~3倍もの筋力を使っています。いくつかの化粧品を、どの順番でどう使うかを考え、色や香りなどを感じて鏡を見ながら腕や手指を動かすため、脳の視覚野、体性感覚野、運動野なども活性化すると考えられます。

 実際に介護施設などで行った『化粧療法』の検証試験でも、徘徊が減ったり、握力がゼロに近かった人が自分でお椀を持ち上げて食べられるようになる、食欲が増進するなど、脳や身体的機能の向上がみられました」

 特に眉を描く動作は、筋肉や脳を使うのだという。

「肩関節を動かす三角筋、ひじを動かす上腕二頭筋、握力を担う第一背側骨間筋、浅指屈筋、総指伸筋、鏡に向かう姿勢を維持する腹筋や背筋のほか、描くために相当の集中力も必要です」

 なるほど、たしかに日常生活の細かな動作の多くは腕の筋力や手の握力が重要。これらの力が落ちれば、食事などが自力でできなくなり、要介護…となるわけだ。

「ですから『化粧療法』は、プロがきれいに化粧をしてあげるのではなく、“自分で化粧をする・楽しむ気持ち”を引き出すメソッド。自分で化粧品を手に取って化粧することで、腕や手指の筋肉が鍛えられ、香りやつけ心地に癒され、メイクで“よそ行き顔”になることで外への関心が湧くのです」

◆化粧療法を学ぶ講座は介護娘たちにも大好評

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン