『ハシケン通信』の配布方法について聞かれた時も変だった。「置くとすれば」「配るとすれば」と、彼の説明はあくまで例え話なのだ。置いたことがあるのなら「置いた時は」、配ったならば「配った時は」と答えるのが普通だろう。「なんだ、実際は置いてないし配ってないんだ」と、聞いた時に思ったものだ。
配った時間は夜間、場所は中央区、人数はわからないと、説明はおおざっぱ。前述したコレットは、嘘をつく人は詳細を省き、時間や場所などついて触れることはめったにないという。さらに真実を話している人は、同じ質問をされた場合、新しい情報を提供するが、嘘をついている人は同じことを繰り返しやすいらしい。まさに、彼の発言にぴったり。
嘘をつく人が隠すのは、真実と隠そうとするために生じる感情だ。そのため、感情が漏れ出てしまう瞬間的な仕草がサインとなる。前の会見でも疑惑のキーワードには目を閉じていた橋本氏。チラシの部数や金額、2つの会社を使った理由について問われると目を閉じた。やはり、核心に触れる言葉には無意識に反応してしまっていた。質問に不快感を感じ、目を閉じシャットアウトしたいという無意識の表れだろう。
会見中は度々、口を一文字に結び、口先をとがらし不安や困惑、不満の仕草を見せた橋本氏。特に数字について聞かれた時は、この仕草が顕著に表れた。部数や金額といった数字が耳に入る度に、彼の結んでいた口元に力が入り、瞬間的に唇が突き出てくる。詳細な事柄から嘘がばれるのを案じたのだろう。時には強いストレスからか、唇が隠れてしまうほどしっかりと口を閉じていた。
「身の潔白を証明するものがない」と釈明すると、「準備してもう一度会見を開くのか?」と突っ込んだ質問が飛ぶ。その瞬間、ゴクリと唾を飲み込んだ橋本氏。強い緊張が彼を襲う。「何らかの形で示していければ…」と答え、あごをグッと引き眉を上げ、額にくっきりとシワを寄せながら目をつむって口をへの字に閉じたのだ。これは心の底で恐怖を感じた時の表情だ。口がへの字になったのは、苦痛と不安、ストレスから心配が高まったため。会見をもう一度なんてとんでもないと、この時、彼は思ったに違いない。
今井議員については「コメントは控える」と言いながら、視線が宙をさまよった。2人の関係はすでに終わったのか、そのまま虚空を見つめた橋本氏。
政治生命も終わった今、彼の視線の先に見えているのは何だろう?