◆なぜ国民に教えないのか
8月25日は、安倍首相は夏休み明け初の公務日だった。午前9時55分に公邸に着くと、来客などの対応をしてから午前10時30分に韓国の文在寅大統領と40分間の電話会談を行なっている。
「ミサイル発射兆候については日米韓で共有していますから、この時点で把握していた可能性が高い。さらに午後3時頃からは谷内正太郎・国家安全保障局長や防衛省の前田哲・防衛政策局長、河野克俊・統合幕僚長らと面談しており、対策を協議したのでしょう。28日は、二階俊博・幹事長や岸田文雄・政調会長、菅官房長官らと夕食を共にしていますが酒をあまり飲まなかったのは、翌日の対応を考えてのことではないか、と見られています」(防衛省幹部)
“予習”の賜物か、26日、29日の両日とも安倍首相は北朝鮮のミサイル発射直後に官邸で記者団の取材を受け、その後、国家安全保障会議に出席するなど迅速な対応を見せた。
だが、国民としてはミサイル発射の兆候を得た時点で教えてほしいというのが本音だろう。29日の早朝、Jアラートが警報を鳴らしたが、日本上空を通過するわずか4分前では、何の対応もできない。ただし、それは決して国民には知らされることはないのだという。
「米軍との軍事機密協定があるため、情報は公開できません。それにミサイルがどこに向けて飛ぶかもわからない状態で発表すれば、無用な混乱を招くことにもなりかねない。現状は北朝鮮が事前通告したものはマスコミを通じて“発射の兆候”などと報じられることがあるが、それ以外の公表は困難でしょう」(前出・織田氏)