国内

防衛大1期生が明かす「吉田茂が語った自衛隊論」

 卒業を目前に控えた昭和32年の2月初旬、屋敷を訪問すると待つこと数分、現れた吉田茂は上機嫌で慈愛に溢れた目で我々を眺め、笑顔を向けてくださいました。私が「写真を撮らせてください」とお願いすると、「君たちが撮るものより良いものを送るから」とのこと。その後は、会話というより吉田茂の一方的なお話しだったように思います。その間に何人も来客があったのですが、「今、学生さんたちと話している。待たせておけ」と秘書の方に伝えていました。来客者の中には、総理大臣だった、鳩山一郎もいたようです。

 2時間ほど話した後に、「腹を空かして帰すわけにはいかない」と、ご自身がいつも利用する寿司屋で大阪寿司を取ってくれました。そして帰り際、「失礼します」と私が代表して頭を下げると、吉田茂はおもむろにこう語り出したのです。

「君たちは自衛官在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることもなく自衛隊を終えるかもしれない。ご苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の危機の時か、災害派遣の時とか、国民が困窮している時だけなのだ。

 言葉を変えれば、君たちが日蔭者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ。一生御苦労なことだと思うが、国家のために忍び耐えてもらいたい。頑張ってくれ。君たちの双肩にかかっているんだ。しっかり頼むよ」

 ちょうど60年前、“オヤジ”こと吉田茂の遺訓ともいうべきこの言葉は、今も私の耳の奥にこだましています。

●ひらま・よういち/1933年、神奈川県生まれ。1953年に保安大学校(現・防衛大学校)入校。卒業後、護衛艦ちとせ艦長、第31護衛隊司令などを歴任し、1988年に海上自衛隊を退職。その後、防衛大学校教授などを務め、1999年に退官。著書に『イズムから見た日本の戦争』(錦正社)、『日英同盟』(角川ソフィア文庫)、共編著に『日英交流史1600-2000〈3〉軍事』(東京大学出版会)など多数。本インタビューは少年サンデーコミックス『あおざくら』4巻より。後編が現在発売中の同5巻に掲載されている。

※取材・文/水野光博

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