相撲ぶりがデカければ、顔付きもまた大物の雰囲気。もしもよく似た姉か妹がいるならばミスユニバースなど世界的な美女コンテストに出場したり、石油王と結婚しそうだと想像させた。肉感的なのだがそれは力士っぽい肉なのではなくグラマラスな、良い意味で大味な顔だと思った(奥目の具合がトランプ大統領夫人、メラニアさんに似ている)。
それから名鑑を見て、本名の笹山を名乗れない理由があることを知った。笹山という力士がすでにいる。三歳上の兄、笹山数馬。入門から一年足らずで、弟は兄を追い抜いて幕下に昇進していった。その後、大成道は幕下上位に定着し奮闘、笹山は幕下と三段目を往復していた。
大成道のモンスターっぽさ(四股名を変える際、手足の大きさが恐竜のようであるから「大成双」と書いてダイナソーと読ませる案もあったらしい)をおもしろがったことをきっかけに笹山の存在も知ったのだが、私は兄の方を応援する気持ちを強く持っていた。よくあるケースだ、とも思った。
若乃花と貴乃花、安壮富士と安美錦もそうであったように、弟が兄より大柄で、昇進が早い(貴公俊と貴源治もそうだが、弟といっても双子なので該当するか考えどころ)。若乃花の十両昇進は貴乃花の二場所後だが、安壮富士のそれは弟の安美錦に遅れること三年半後だ。大成道はこの九月場所十両に上がった。私は、笹山もいずれは関取になると信じている。
なぜなら、笹山は大成道の付け人を務めることになったからだ。奮起させたいとの木瀬親方の愛情なのだろうか。笹山自身がすすんで志願したのかもしれないが……。それをつらく悲しいことととらえるのは、私の心が弱いせいだ。残酷な現実を血に変え、笹山は前進する。三年後、兄弟関取として活躍している彼らの姿が楽しみでならない。
※週刊ポスト2017年9月29日号