正しいディスカウントとは、「エブリデー・ロー・プライス(EDLP)」です。通常価格を大幅に下げるのではなく、大根でも最初から常に100円程度と低価格で売るのが大手の主流のやり方です。EDLPを実現するために、たくさん農家と長期の仕入れ契約を結び、市況に関係なく一定量を仕入れられる体制を築いています。
それは生鮮食品に限らず、ユニクロがやっているような衣料品もそうですし、ニトリが手掛ける家具・ホームファッション商品もそう。そうした商品開発の仕組みづくりができなければ、今回のように“ゲリラ的”に目を引く商法に頼らざるを得ない。
しかし、このやり方は決して長続きしません。手を変え品を変え激安商品を用意しなければならず、結局体力を消耗するわけです。また、安売りばかりしていると仕入れ数量を安定的に確保できません。最近では大手スーパーでさえも、低価格を維持するため自ら子会社で農業生産法人をつくり野菜をつくっているほどです。
とはいえ、EDLPの商品をたくさん揃えるには、ある程度の店舗スケールが必要で、日本で出来なければ海外でコスト条件がよく、競合他社と同等かそれ以上良質の商品を開発する必要があります。
船で運んで自社倉庫に置くなど物流コストをかけても他社より安い。大手のスーパーは総合商社のグローバルなネットワークも使えるのでそれも可能ですが、小さな地域密着型のスーパーではできません。
また、イオンのような大手スーパーでも食品を生産者やメーカーから直接買って、問屋を介在させない商品が圧倒的に多くなりました。ビールもメーカーの工場にトラックを送って直接買い、自分たちのコストで自前の物流倉庫まで運んでいる。だから仕入れコストが安く済み、価格に転嫁させることができるのです。
そういった意味では、農家が産物を直接店に納入する「道の駅」も地域スーパーにとっては大きな脅威になっています。
では、地域密着型の小さなスーパーが、大手スーパーや量販店に負けないようにするにはどうしたらいいか。規模は望めませんが、やはり地域の農家と持続的な関係を構築し、安定して商品を供給してもらうしかありません。
そして、信用力を勝ち取り、価格もEDLPにもっていく。もし1社でできなければ同業他社と手を結べばいいのです。事実、いまは全国で小さなスーパー同士の「地域連合」ができあがっています。
取引先や生産者に「長い付き合いだから仕入れコストを安くしろ!」と値下げ圧力をかける強引なやり方もよく耳にしますが、商道徳の話もさることながら、コスト、コストで痛め付ければ生産者はやっていけず、廃業や倒産に追い込まれていきます。豆腐や納豆などのような加工食品業者もどんどん減ってしまうでしょう。
そのうえ、雇用や失業など社会問題も招くことにもなります。家族経営など痛みが最小限で済めばいいですが、コストを削減するがあまり、そのしわ寄せはすでに従業員の給料減額やサービス残業の増加、取引先や生産者にまで及んでいるのです。
なによりも、生産者がずっと商売を継続できるような妥当な仕入れコスト、適正価格を決めているか。公取委の最大の睨みどころもそこです。そうしなければ、モノづくりすべてが疲弊し、ひいては日本の産業全体にとって大きなマイナスとなってしまうのです。