◆「体も心も」支えるケア
25年前、緩和ケアの草分けとして開設された、緩和ケア診療所「いっぽ」(群馬・高崎市)。現在は2人の医師と9人の看護師が、24時間態勢で、進行がんの患者の在宅生活を支えている。
緩和ケアについては、医療従事者の中にも誤解が多い。次に挙げる5項目は、代表的な“誤解”だ。
【誤解1】緩和ケアは看取りの医療=痛みをとるだけ
【誤解2】がんの疼痛コントロールには薬のみが有効
【誤解3】医療麻薬のモルヒネは中毒になる
【誤解4】抗がん剤治療を続けることが、長生きする唯一の方法
【誤解5】セデーション(鎮静処置)は安楽死と同じ
松野さんのような病状の場合、車で往復2000キロの旅を許可する病院はまずない。容体の急変するリスクがあり、管理責任を問われかねないからだ。
だが、松野さんにとって、仕事の関係先に後継者である息子を紹介することは重要だった。本人が望む生き方を医療面と精神面で支えることが“いっぽ流の緩和ケア”といえる。
がん特有の身の置き所がないほどの“疼痛”は、モルヒネだけでなく、精神面を支えることで改善することも多い。
●文中一部敬称略
※週刊ポスト2017年9月29日号