片山:7月の沖縄サミットでは、プーチンが初来日しました。いまも森元総理とプーチンが堅い信頼関係で結ばれているといいますね。
佐藤:実は、平壌経由で来日したプーチンはサミットに遅れて到着した。遅刻に怒ったフランスのシラクに対し、森さんが「彼は金正日の情報を我々に提供するために北朝鮮に寄ってきてくれたんだ」となだめた。プーチンは、助け船を出してくれた森さんにいまもとても感謝しているのです。
片山:一方で、森さんほど、マスコミに叩かれた人もいない。
佐藤:流行語になった「IT」を「イット」と言って叩かれていましたね。 もう1つが「神の国」発言。森さんは神道政治連盟の集まりで「日本は神の国だから」と語りました。神主たちを対象にした発言をそこまで叩く必要があったのか、マスコミは意地が悪いなと感じました。
片山:いまならもっと過激な発言をしても許されるでしょうね。逆に拍手が起こるかも知れない。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
※SAPIO2017年10月号