「自動車の燃費・環境問題の一番の近道はクルマの軽量化であり、1台の車に使用されるアルミの量は増え続けている。神戸製鋼はアルミ部材の競争力を維持するために、5月に日本と韓国で550億円にのぼる大型投資を決断した。
しかし、どうしてもアルミは鉄に比べて強度が足りないため、軽くて丈夫なアルミ製品に対する自動車メーカーの要求は年々激しくなっていた。会社上層部からは、取引先の要求を満たす製品の製造を厳命される。そのプレッシャーがデータ改ざんの恒常化へと結びついた」(全国紙記者)
梅原副社長も会見で不祥事の原因を問われ、〈納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーがあった〉と述べている。会社の生き残りや同業他社との納入競争に固執するがあまり、「多少数値をいじってもクレームがこなければ……」という雰囲気が組織全体に蔓延していたことは容易に想像できる。
まるで“チャレンジ”と称して現場の事業部門に過剰な業績改善を要求していた東芝と同じ構図だが、前出の関氏は「村社会の形成という点で根は同じ」と指摘したうえで、こういう。
「会見で副社長も話していましたが、神戸製鋼では、従業員が一度ある工場に配属されると、その工場で長年働き人事異動もない閉鎖的な環境が築かれていたといいます。つまり、工場で働く人がひとつの家族であり、村社会だったのです。
こうなると、外部のチェックが入ったとしても内部で一致団結して工場を守ろうとしますし、たとえコンプライアンス上、問題があってもそこで働く社員にとっては、その中の正義こそが絶対なのです。ヤクザの世界と一緒で、親分が白といえばカラスも白くなる。それが組織の一体感を維持する秘訣でもあったのでしょう」
関氏は、程度の差こそあれ、多くのメーカーは神戸製鋼や東芝と似たような問題を抱えていると話す。
今後、神戸製鋼の問題がどこまで広がるかは予断を許さないが、直近では日産の「無資格検査」も発覚したばかり。これ以上、名だたるメーカーの不祥事が続けば、それこそ「メイド・イン・ジャパン」の信用力は地に堕ちる一方だ。