世界のモーターショーはおおむね3つのパターンに分類される。自動車メーカーや部品メーカーの交流の場であるビジネスショー、クルマや技術を一般に広く見せるユーザーショー、クルマを展示しつつ、そこで商談が行われる販売ショーだ。
1番目のビジネスショーは北米のデトロイトショー、欧州のジュネーブショーやフランクフルトショーなどが当てはまる。それに対してTMSは5大モーターショーなどともてはやされた時代から、2番目のユーザーショーであることを身上としてきた。もちろん自動車の進化のカギを握る将来技術もさかんに見せてきたが、それはビジネス交流というより、クルマのユーザーに向けたエンターテインメントという側面が強かったのである。
が、いまやユーザーはクルマ離れ。今はまだ、中高年を中心にクルマに関心のある層がいくらか残っているので、その惰性で何とか体裁を保てているが、問題は将来だ。
「もともとショーの来場者は、今は新車を買う余力はないがクルマに憧れを持つ若者やヤングファミリーが中心だったのに、今は中高年の姿ばかりが目立ちます。でも、彼等がクルマを買うのはあと1回か2回。すでにその先がどうなるかということには関心がないから、ショーからは自然と離れていく。
これは日本市場の将来の危機でもあるのですが、若者を今取り込めなければ、もう復活はなくなる。自動車産業のグローバル化の影響で、ウチだけでなく日本メーカーはどこも、東京モーターショーを自社のPRの主軸に置けなくなってきている。しかし、若者が離れてしまったら自動車産業は、志を持った人材に来てもらえない産業になってしまう。どうすればいいのかわからないというのが現状です」
トヨタ関係者の一人は将来をこう危惧する。若者にモビリティへの夢を持ってもらうというユーザーショーの役割を、今回のTMSは果たせるのだろうか。
自工会は今回、デジタルプラネタリウムの技術を使った360度のドームシアターを会場に設置し、来場者に自動運転、カーシェアリング、パーソナルモビリティなどの将来技術を仮想体験してもらう「TOKYO CONNECTED LAB 2017」を出展するという。「量より質のモーターショーを象徴する思い切った企画」と、自工会関係者は胸を張る。
だが、自動車メーカー関係者からは、こういう方向性がいいのかどうか、首を傾げる声が少なからず聞かれる。
「これからクルマはカーシェア、電動化、自動運転などと言われていますが、それらが本当に実現されるとしてもはるか将来のこと。しかも、もしそうなったらクルマは公共交通機関と同じ。もちろんビジネスとしての自動車産業は存続するでしょうが、エンドユーザーの興味を引かなくなる可能性が高い。
それでクルマを生活や遊びにもっと積極的に使い、消費が伸びるような方向性を打ち出すようなコンテンツになっていればいいですが、そんなことは世の中で誰も思いついていない。とてもつまらない未来像が提案されはしないかと個人的に危ぶんでいます」(国内自動車メーカー関係者)