ライフ

糖質制限の沼 日本人の食を変えた「江戸時代の丼」に起源

カツ丼は大正時代に登場した(写真:アフロ)

 健康と糖質は切っても切れない関係にある、そんな空気まで感じられる今日この頃、健康への意識は高く保っていたいと思っても沼地にいるかのような感覚を抱いている人も少なくないのではないか。この空気のルーツはどこにあるのか、食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 もはや「糖質制限」はブームやトレンドという言葉でくくりきれなくなってきている。富士経済によれば「糖質オフ・ゼロ」食品の市場規模は2012年の2468億円から2016年には3431億円(見込み)と4割の急成長を遂げている。今回の衆議院議員選挙の報道を見ていても、「糖質を取らないように焼酎やウイスキーを呑んでいる」「糖質制限の食事を心がけている」というようなコメントを出す候補者が与野党問わず、目についた。つまり「糖質制限=健康的」というイメージが(少なくとも候補者側には)定着しつつあると考えられる。

 実は糖質制限≒肥満防止≒健康という考え方は、欧米では200年前から概念としては存在する。美食家で知られるサヴァランは1825年に出版された著書『味の生理学(The Physiology of Taste)』(邦題は『美味礼賛』)のなかで糖質と肥満の関係に触れているし、その後も糖質と肥満を関連づける説は数え切れないほど挙げられてきた。よく「日本人は農耕民族だから米を中心とした糖質が主食。欧米人は狩猟民族だから肉を多く摂取する」というが、欧米人だって小麦から作られたパンやジャガイモを摂取してはいる。

 ただし江戸時代に登場したファストフードが日本人の食習慣を大きく変えたという側面は否めない。江戸時代、一杯盛り切りの飲食物を出す店を「慳貪屋(けんどんや)」と言い、そこで使われる鉢が「慳貪振り鉢(けんどんぶりばち)」と呼ばれるようになった。有力な「丼(どんぶり)」紀元節のひとつだが、この「丼」が日本人の食生活に大きく影響を及ぼした。

 文化文政時代──化政文化華やかなりし頃に登場した、鰻丼や天丼などの丼ものである。少しのおかずで、米をたくさんかっこむことができ、満足感もある一大発明だった。その後明治時代に牛丼、大正時代にカツ丼が登場し、「メシ多く、おかず少なめ、味は濃い」丼文化は広く定着し、日本人にとって「米」はさらに重要視されることになっていく。当時の食事情はいまよりも貧しく、しかも肉体を使う仕事が多かった。摂取エネルギー量だけでも増やさなければならない時代の趨勢に合っていたのだ。

関連記事

トピックス

「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン