映画を撮るときの対象との距離感は熱を見ながら正確な冷静さを意識 映画『全員死刑』より


──あまり不良の文化とはかかわらない十代を過ごしたのですか?

小林:友だちのなかにも不良は普通にいました。通っていた学校は、不良も内気でおとなしい子も、みんなが分け隔てなくごちゃごちゃに遊ぶのが当たり前のところでした。だから、不良がトラブル起こしても、巻き込まれないようにさっさと逃げたり、それなりの距離感でつきあいを続けていました。映画を作ろうと彼らの話を聞く上で知りたかったのは、あのとき、トラブルから逃げなかったら何が見えたのかということでした。

──どんな見知らぬ風景が見えたのでしょうか?

小林:まず、不良のヒエラルキーが絶対であることに驚かされました。不良ではない自分たちが知らないとき、怖い先輩に呼び出されて理不尽な理由でこてんぱんにやられたという話をいくつも聞きました。そういう話を聞いたとき、すごい憎悪がわき上がりました。権力みたいなもの、人を押さえつける圧に対してのものすごい怒りがあります。不良でなくても、今は小さい頃から圧をかけられて、考えていることがゆがめられることがすごく多いと思うんですよ。自由だと言われるネットですらリンチが起きる。そういった押さえつけるものへの抵抗は、いつも意識しています。

●こばやし・ゆうき/1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。東京デザイン専門学校グラフィックデザイン科卒業。『Super Tandem』(2014年)で第36回PFF入選、『NIGHT SAFARI』(2014年)でカナザワ映画祭グランプリ。『孤高の遠吠』(2015年)で第26回(2016)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門グランプリ。2017年は『逆徒』、商業デビュー作品となる『全員死刑』(2017年11月18日公開)、さらにもう一作品の公開が控えている。取材に基づいたリアリティある暴力描写に注目が集まり、いまもっとも商業デビューを待たれていた若手監督のひとり。

◆取材・構成/横森綾

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