ライフ

介護食市場拡大へ イオン、明治、吉野家ら大企業も続々参入

食事は重要な営み(写真:アフロ)

 食をめぐる産業は既に成熟している、と思ったらそうではないようだ。高齢化社会に向けて、拡大が確実視されるのが介護食市場である。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
「食」は世相を写す鏡だ。バブル当時は高額な外食産業が台頭し、リーマンショックが起きれば中食や内食、ホームパーティがブームとなる。では現代はどうかというと、日経平均2万2000円台を回復したものの、好況を実感するほど収入が上昇したわけでもない。外食も活況を呈しているが、中食や内食も多様になった。ただし、確実に伸びている分野もある。高齢化社会を反映した「食」だ。

 イオンは今年プライベートブランドで扱う介護食の品ぞろえを強化している。これまで20品目程度だったラインナップを、2018年2月期に40品目と倍増させる。イオンのような大型店では専用売り場を設営、小規模店舗の「まいばすけっと」での販売も視野に入れているという。ドラッグストアなどへの流通も強化し、販売額も前年度比1000%の10億円を目標としている。

 介護用品売り場「あんしんサポート」を店舗で展開する、イトーヨーカ堂も介護食に力を入れる。これまで「あんしんサポート」で扱っていた介護食を食品売り場にも展開。昨年末から一部店舗の食品売場では介護食の棚を作っていたが、今後は全店の食品売場に介護食の棚の設置を目指すという。

 介護食を手がけるメーカーのラインナップも充実してきた。早期から介護食を手がけるキユーピーの「やさしい献立」シリーズや、明治のストローで飲むバランス栄養食「メイバランスMiniカップ」など、在宅向けの介護食も充実してきた。

“介護食”のすそ野も広がってきている。従来は「やわらかさ」を重視したものが多かったが、大塚食品が1食100kcal(ごはんやパスタは150kcal)という「マイサイズ」シリーズを発売。通常のレトルト食品と同等の食べごたえや噛みごたえを演出しながら、ボリュームや塩分を抑えた品や、たんぱく質を強化したアイテムも登場している。

 在宅向けばかりではなく、医療・介護施設で提供される介護食にも変化が見える。牛丼の吉野家は事業所給食会社のエームサービスと組んで、同社が給食を提供する約100の事業所で具材のやわらかい牛丼「吉野家のやさしいごはん」を提供する。店舗と同じ絵柄入りのメラミン製の丼で提供するという念の入れっぷりで、外食から遠ざかっている高齢者にとって、こうした細やかな「くすぐり」も好評だという。

 高齢者のみの世帯では食事の準備も負担になる上、火の消し忘れなどさまざまなリスクもある。栄養の補給という面からも、高齢者にとってこそ「食」は重要な営みだ。現在70億円と言われる、在宅介護向けの介護食市場は今後も拡大していく。数年後には団塊の世代も後期高齢者になる。単なる流行やブームではなく、ニーズが産んだトレンドの腰は強い。

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン