社会面の片隅の雑報扱いの記事である。普通に読んでいたらまず目に入らない。「地球接近の小惑星撮影」とか「ゴルフ場被害で東電に賠償命令」というお知らせと並ぶ短報なのである。
安全保障問題には敏感な産経新聞にしてこれだから他のメディアの扱いは推して知るべし、尖閣諸島の日本領海への中国艦艇の侵入はまったくの軽視なのだ。総選挙でも争点にならない。国会の審議でもツユほどの言及もない。
◆艦隊が定期的に日本領海へ
だが私の取材拠点のワシントンではアジア安保や中国軍事動向の専門家たちの間で、中国の尖閣攻勢は日本にとって重大な危機であり、アメリカにとっても深刻な懸念の対象とされている。まさに日本の国難という位置づけなのだ。
確かに中国の尖閣侵犯はここ数か月でもその規模と頻度を増してきた。昨年までは尖閣周辺の日本領海やそのすぐ外側で日本の主権の及ぶ接続水域に侵入してくる中国海警の武装艦艇はいつも2隻だった。だがいまでは必ず4隻の行動をともにする艦隊となった。倍増なのだ。しかも各艦は1000t級から5000t 以上の、巡視艇としては大型ばかりの組み合わせだ。この艦隊が毎月3回ほど、定期的に日本領海に侵入してくるのだ。
日本側ではこれらの艦艇を中国公船と呼ぶ。公式には国家海洋局の傘下の中国海警局所属の船だが、海警局は事実上は人民解放軍の指揮下にあり、軍事色が強い。実際に尖閣領海に侵入してくる艦艇はみな大型機関砲などで武装している。目的は究極的には尖閣諸島の日本からの奪取である。