国内

ペットには向かないカワウソ 感染症リスク高く密輸の対象に

カワウソはペットには不向き(Ph:Thinkstock/Getty Images)

 犬や猫だけでなく、たくさんの種類の動物がペットとして飼われている。しかし、中には「ペットに向かない動物」もいる。例えば今大人気のカワウソ。実は家庭で飼うには向かないという。その理由と問題点とは何か。

 今年10月、全国の水族館や動物園で飼育されているカワウソのナンバーワンを決める「第一回カワウソゥ選挙」が開催された。総投票数は、目標の1万票を大きく上回る51万票以上を記録し、大きな反響を呼んだ。また、カワウソと触れ合えるカワウソカフェも全国的に増えており、今、空前のカワウソブームが起こっている。

 そもそも、ほとんどのカワウソは絶滅危惧種だ。多くの動物園・水族館で飼育されているコツメカワウソも、ワシントン条約では附属書II(国同士の取り引きを制限しないと、将来絶滅の危険が高くなる生き物)に入っており、日本に輸入するためには、輸出国の輸出許可証が必要となるが、法律上自宅でペットとして飼うことは禁止されていない。

 カワウソの愛嬌のある表情や仕草にハマり飼いたいと思う人も多く、ペットショップでは1匹50万~100万円で販売されている。

◆飼育には大きなケージや水場が必須

 ブームを受け、カワウソを飼いたいという人が増えているが、カワウソはペットに向かないと、国内外でカワウソの研究を行う筑紫女学園大学の佐々木浩さんは指摘する。

「動物園や水族館などでの飼育のマニュアル化は進んでいますが、カワウソの生態はいまだ未知の部分が多い。人への感染症の有無についてもはっきりしておらず、リスクが高いんです」(佐々木さん)

 欧米では傷ついたカワウソを保護するケースはあるが、一般家庭でペットとして飼うのは世界的にも珍しいという。

 飼育には、水浴びや運動ができる広いプールやケージなどが必要なうえ、カワウソは群れで生活するため、多頭飼いが理想となる。経済的負担が大きい点も、日本で飼うには不向きな理由になっている。

◆絶滅危惧種なのに密輸の対象に!

 テレビなどを通じて、かわいいイメージが先行し、生態や飼育法についての正しい知識や情報が伝わらないまま、ペットとしての人気は加速する一方だ。

 需要が急激に増えたため、ペットショップでの価格も高騰を続けており、その影響で、深刻な問題も起こっている。

 今年10月にタイの首都バンコクの空港からカワウソ10匹を密輸しようとしたとして21才の女子大学生が野生動物保護法違反で逮捕された。同様の密輸事件は今年だけで4件起きている。

「これは異常事態です。絶滅危惧種であり自然の状態でも減りつつある中で、絶滅に拍車をかけることになりかねない」(佐々木さん)

 本来なら保護しなければいけないカワウソを、危険にさらしているのだ。佐々木さんの研究グループはこの状況を危惧し、タイの研究所と今後の対策について検討を始めたという。

※女性セブン2017年12月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト