◆食後は磨く前に「うがい」
米山氏によれば、2つの理由がある。
「ひとつは口内細菌を減らせるからです。口の中には600~700種の細菌がいて、不衛生になると何十兆にも増える。なかでも肺炎桿菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が肺に入ることで誤嚥性肺炎が起こります。歯を磨いて口の中の細菌を減らせば、誤嚥によって肺に細菌が入るリスクも減らすことができます」
もうひとつは、歯磨きによる「刺激」の効果だ。
「嚥下反射や咳反射の力を高める『サブスタンスP』という神経伝達物質は、口内の刺激によって分泌が促進されます。歯磨きで口の中を刺激すると、唾液中のサブスタンスPの濃度が上昇し、誤嚥リスクの低下が期待できます」(米山氏)
米山氏らの研究グループは全国11か所の特別養護老人ホームで、週1回歯科衛生士による口腔ケアを受けたグループ184人とケアを受けていないグループ182人の健康状態を追跡調査している。その結果、口腔ケアを受けたグループの肺炎の発症が約4割減ったと報告されている。
日本訪問歯科協会が口腔ケアにより誤嚥性肺炎を防げることを介護事業者に伝える勉強会を全国で行なうなど、近年注目が高まっている予防法なのである。