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【岩瀬達哉氏選】2018年に読みたい「原発のゆくえ」

添田孝史・著『東電原発裁判 福島原発事故の責任を問う』

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? ノンフィクション作家の岩瀬達哉氏は、原発を読み解く本として、『東電原発裁判 福島原発事故の責任を問う』(添田孝史・著/岩波新書/780円+税)を推す。岩瀬氏が同書を解説する。

 * * *
 本書は、原発訴訟という専門的で複雑な裁判をわかりやすく解説しただけでなく、東京電力の政治力と、経営トップの怠慢ぶりまで調べ上げた調査報道である。

 何より驚かされるのは、原発事故が発生する数年前には、すでに大規模地震が「福島県沖で発生する可能性」を「政府の地震調査研究推進本部」が公表していたことだ。その場合、「一五・七メートルの津波」に襲われ、「原発の非常用設備は水没して機能を失い、全電源喪失にいたる」ことを、「東電の子会社」でもシミュレーションしていたというのだ。「大きな津波が来るかもしれないというのはわかっていたが、まあ、来ないだろうと、一か八かにかけて運転していた」のが、福島第一原発だったのである。

 避けえない危険が身近に迫っていることを知りながら、肝心の津波対策を先送りしたのは、経営が「二期連続赤字」だったからだ。「三年連続の赤字を回避する」ため、「数百億円かかるとみられた津波対策は、業績が回復するまで着手を遅らせた」のだという。

 安全対策より、企業の利益確保を優先したおかげで、未曾有の過酷事故を招き、多数の地域住民に被害を与えただけでない。今後、「廃炉や賠償などにかかる費用の総額は経済産業省の見積もりで二一・五兆円」かかることになった。

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