ライフ

豚肉調理法には進化の余地 ギリギリの旨さ狙うには技術必要

豚肉の調理は実は難しい(写真:アフロ)

 日本の「食」のレベルが世界でもトップクラスであることは論をまたないが、進化の余地もまだ残されている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 昨年の最後の本稿で「2017年は肉の多様化──選択肢の多様化が定着した年」だと書いた。では、2018年はどうなるか。例えばこの数年、ブームとなっている肉なら「文脈」や「必然性」が求められるようになってくるはずだ。

 食べ物に「うまさ」が求められるのは世の常だが、これまでの肉は「さらなるうまさ」「希少性」という高い要求水準を満たすだけのインフレがぎりぎりで成立していた。国内外を問わず、知られざる肉も少なからずあったし、調理法も「もっとおいしくなる手法」があると(特に食べ手にとって)期待できる「伸びしろ」があると思われていた。

 だが、メジャーメディアだけでなく、インターネットやSNSなどの充実のおかげで、多くの「知られざる肉」には光が当てられるようになった。調理の科学的アプローチも日常のものになり、ラーメン店のチャーシューや日常の食卓にも低温調理のような手法は浸透してしまっている。こうなると食べ手が「食」に幻想を抱くのは難しい。日本人は知っていることに幻想を抱くほど、能天気ではない。

 そこで求められるのが文脈であり、背景であり、必然性だ。食べ物や素材に踏み込み、なぜその素材をその調理法で食べるのか。もはやおいしさは訴求ポイントではなく、前提になる。ヒントになるのは和食における「旬」だ。山海の素材をもっとも大量に、もっとも手軽に手にできるのが旬であり、日本人は巧みに和食という文脈に乗せてきた。「文脈食」は和食の延長線上にある。

 仮に何かの調理法が残された肉となると「豚」だろう。牛肉はステーキの焼き加減を考えてもウェルダンからレア、ブルーなど食べ手もさまざまな食味を覚えている。店や家庭で提供されるローストビーフなどは、もはや首をひねりたくなる店を探すほうが難しい。店も家庭も、牛の肉焼きについてはこの数年で劇的にレベルアップしている。

 しかし豚となると話は別。もともと日本の家庭では「茶色くなるまで加熱すべし」と教わってきた。ロゼ色の豚肉が世の中に受け入れられるようになったのは、本当にこの数年のことだ。それでも安全に食べられるよう、内部が一定の温度になるまで加熱しなければならないし、そこから少し温度を上げただけで、肉は驚くほど硬く、パサパサになってしまう。ギリギリの頃合いを狙うには技術が必要で、だからこそそこには隙間がある。

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン