フラッシュメモリも青色LEDも会社の利益の大半を稼ぎ出したのだから、舛岡氏や中村氏が相応の発明対価を要求するのは当たり前である。にもかかわらず、日本企業は彼らのような傑出した人材の貢献に正当な報酬で応えてこなかったのみならず、裁判で争うという醜態を晒している。社員の能力や成果に対して給料を払うというシステムになっていないからである。

 大量生産・大量消費の20世紀はそれでも何とかなったが、21世紀は無理だ。「尖った人間」「特異な能力がある個人」をうまく生かせるかどうかで、企業の命運が決まるからだ。かつてのNHKの名番組『プロジェクトX~挑戦者たち~』では、たびたびチームプレーが礼賛されたが、もはや「和を以て貴しとなす」「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という日本的な平等主義で社員全体の報酬を抑えるのは、怠慢経営者のエゴでしかない。

 ファーウェイの「初任給40万円」は、そういう日本企業のガラパゴス的な経営に風穴を開けるものだ。

 とはいえ、世界的に見ればファーウェイもまだ“バーゲン価格”である。スポーツ界では、しばしば日本人メジャーリーガーらの高額報酬が話題になるが、エンジニアや経営者も世界の一流企業ではトップアスリートと遜色のない高給を得ているという現実をもっと知るべきだ。

 そうしたグローバルスタンダードが日本でも当たり前になり、自分の大学の同期が新卒で年収1500万円の会社に就職したり、会社の同僚が年収5000万円で他社に引き抜かれたりするようになれば、日本の内向きな若者たちの目の色も変わるはずである。

 残念ながら日本企業は、ファーウェイが20年前に学んだ「日本の失敗」に、未だ学んでいない。それを変革するために、ファーウェイには今後も給与レベルをどんどん引き上げて、日本の採用市場を大いに引っ掻き回してもらいたい。

※週刊ポスト2018年1月12・19日号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン