同委の内偵調査報告書を読んだ習氏は激怒し、孫氏の身柄を拘束するなどの強制措置をただちにとるよう命令。孫氏は7月に職務停止となり、身柄を拘束されて取り調べを受け、9月下旬には党政治局会議で、「野心家」「陰謀家」「党の権力を奪おうとの陰謀をめぐらした」などと非難され、正式に党籍が剥奪されたほか、一切の職務も解任されている。
重慶市では2012年にはトップの薄熙来氏が重大な規律違反で逮捕され、腐敗問題や夫人の殺人事件の隠ぺいなどが明るみに出て、無期懲役の判決を受けているが、同委は昨年2月、重慶市当局は「薄煕来・元党委書記の影響から抜けていない」と批判。この段階で、孫氏の腐敗の実態をつかんでいたとみられる。6月には、孫氏の側近だった何挺・公安局長が失脚し、孫氏の愛人や隠し子、公金横領などについて具体的に供述しており、孫氏の身の破滅につながった。
『習近平の正体』などの著書があり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は「同じ重慶市から6年も経たずに、トップが腐敗問題で更迭されるのは極めて珍しい。とくに、孫政才はポスト習近平体制において、首相の最有力候補に挙がったこともあり、何もなければ最高幹部への就任は間違いないとみられていた。重慶市は北京から遠く離れている割には、内陸部の経済や工業の中心都市で、権限も大きいだけに、誘惑には抗いがたい独特の風土があるのかもしれない」と指摘している。