これまで「月9」にもいろいろと個性的なヒロインが登場してはきたが、これほど「カメラ目線なし」「アップ少な目」ヒロインは珍しい。クラゲのほうが長い時間アップになっているくらいである。今後は蔵之介が、月海にメイクを施し、ドレスを着せて可愛く演出。シンデレラスーリーに!?その「変身」ぶりがカギとなりそうだ。

 ここで思い出すのが、2012年に放送された同じ東村アキコ原作のフジテレビ深夜ドラマ『主に泣いてます』である。

 このドラマのヒロインは、絶世の美貌ゆえに望んでもいないのに男に惚れられてしまう美女泉(ドラマ初出演にして初主演の菜々緒)であった。妹の婚約者まで自分に惚れたために妹に恨まれて苦しみ、働くことも定住することもままならない泉は、既婚者の美大の先生を愛して愛人となり、泣いて暮らしている。そして誰にも惚れられないように「子泣き爺」などの珍妙なコスプレをしているのである。

 菜々緒が肌色の股引を穿いて蓑を背負い、「丸金」の腹掛けをして子泣き爺になっている姿は衝撃だったが、美を封印する泉は、美人になっていく『海月姫』とは正反対の「変身」をおどおどとしているのだ。それをおどおどとは無縁としか思えない菜々緒が演じていたことに奥深さを感じる。

 もうひとつの東村ドラマ『東京タラレバ娘』も、年下の男(坂口健太郎)に本気になっていいものかと、内心おどおどする娘(吉高由里子)と親友ふたりのそれぞれの恋物語が描かれた。オタクの世界に引きこもっていても、コスプレしていても、親友たちと強気にしていても、やっぱり心配はつきない。心の奥底のおどおどをリアルに描くことこそが、東村マンガ原作ドラマの真っ芯なのかもしれない。芳根京子は、その真っ芯を一番素直に表現した女優といえる。

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