ライフ

歴史学者・山内昌之氏が語る「我が人生の書棚」

歴史学者の山内昌之氏 撮影/藤岡雅樹

 書には、先達の知恵、喜びや楽しみ、苦しみや悩みが詰まっている。歴史学者で東京大学名誉教授の山内昌之氏が、人生を学んだ3冊を紹介する。

 * * *
 私は北海道大学の「文類」(文系学部に進む枠。当時)に入学後、いろいろと迷いもしましたが、事物を具体的な文脈で考えることが好きで中学生の時から『史記』を愛読していたこともあり、歴史学への関心を深め、文学部史学科へと進み、以来今日に至っています。

 しかし、年老いるに従い、果たしてそれで良かったのかと、夢にまで見るのです。率直に言って、文学部は男子が一生を捧げるに相応しいところなのかと、自分の選択をいつも懐疑的に振り返りました。人生の選択を先に延ばし、社会との関係の選択も曖昧にしておく。文学部にはそういうモラトリアム的な側面がつきまとうからです。経済や法にも関心があり、早く大学を卒業して社会のために役立ちたいという願望もあっただけに、実業や役人の世界に入っていたら、どうなっていただろうかと、つい想像するのです。

 その一方、東大教授を辞めて実社会にいる人達と接してみると、世の中に役立つ物やサービスを提供できる喜びや楽しみに満足を感じ、失敗すれば苦しみや悩みを味わっていることがわかりました。人はそうした様々な思いについて理解するために本を読むのですが、苦悩や悲喜は文学部の学問が扱う領域です。とすれば、文学部も長期的には世の中に役立っているのかとも考えました。
 
 私が大きな影響を受けた本としてここに挙げる3作には共通点があり、それはいずれもが、人生における苦しみや悩み、喜びや楽しみなどを深く感じさせる書物だということです。しかも、抽象的にではなく、自分自身が経験した歴史や人生、生活の中で具体的に語っているのです。いずれも大学に入った頃に初めて読み、以来、折あるごとに読み直しています。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン