芸能

立川談春 通常はあり得ない大ネタ2つの独演会

立川談春の「ありえない」独演会とは

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、ふつうは避けられる、季節や題材が似た大ネタを二席、上演した立川談春の独演会について振り返る。

 * * *
 立川談春は毎年暮れに大阪のフェスティバルホールの独演会で『芝浜』を演るが、昨年はそれに加えて『文七元結』もネタ出し。こういう暮れの大ネタを2つ並べるというのは通常あり得ない。だが1982年12月、立川談志が「30周年ひとり会」で『富久』『芝浜』の2席を立て続けに演じた例もある。僕はそれで衝撃を受けて一気に談志ファンとなった。それを思い出しながら、僕は12月28日、大阪に向かった。

 1席目『文七元結』は佐野槌の場面から始まり、女将の名台詞を聞かせた後すぐに吾妻橋へ。ここでの文七と長兵衛のやり取りの面白さは空前絶後! 文七の子供っぽい強情さがなんとも可笑しく、対する長兵衛もフラ満開で可愛げがある。この2人の掛け合いが自然と笑いを生み、湿っぽくならない。

 翌朝、近江屋に身請けされたお久と共に佐野槌の女将も長屋を訪れて長兵衛に言葉を掛けるというオリジナル演出は、この女将の存在感が強い談春版『文七』においては説得力がある良いアイディア。お久に一目惚れした文七が、長兵衛に「俺を唸らせるだけのものを持ってきたら許してやる」と言われて発奮、元結に工夫を施して認められ、お久と夫婦になる……というのも「それなら納得」のハッピーエンドだ。

 2席目が『芝浜』。冒頭、起こされた勝五郎が家を出て「町内の犬にまで忘れられちまった」と呟くところまで描いた後、すぐに場面転換して「おっかあ、開けてくれ!」と帰宅し、財布を拾った経緯を女房に語る。芝浜の場面を描かないこの演出は8年前から取り入れている。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン