しかしである。それ以降、久保と蒼川の2ショットが自身の手でSNSに上がることはなかった。同じ場所にいる様子は見られるものの、互いを語る描写が一切出てこない。交際を隠す必要はない2人、公にした方が反響集めそうなのに……、いやいやそんなのは素人考えか……、静かにしておいて結婚会見でブチ上げるのか!? なんて余計なことを考えていた。
そんな日々のなか、バチェラーによって名声を得た2人は、ヒップスターへの道を邁進していく。久保は小学館から『その恋はビジネス的にアウト』を上梓。ビジネスの手法を恋愛で生かす指導者として、ホリエモンとも対談。蒼川は、講談社の個性派アイドルオーディション「ミスiD2018」にエントリーし、主宰である小林司から個人賞が贈られた。
「ミスiD2018」に応募する際に蒼川が書いた自己紹介文を読み、そして驚く。文面に描かれていたのが蒼川の孤独と闇について。人に憧れられる存在でありたいという想いと共に「結局どこにいても孤独に感じてばかりだったし、その分他者からの承認欲求に飢えていたと思う」と綴られる。その一方で、小林司のコメントには「最終面接でのエピソードでいちばん痺れたのは『お仕事で会う大人の男のひとのほとんどが口説いてくる』でした」。もちろん、男のひとからの誘いに蒼川が”乗っていない”前提で書かれている。
「ミスiD2018」のエントリー動画で蒼川は、「23年間生きてきて、クソみたいな男もいたし、女もいたし、いっぱいいたけどそれが今の自分を形成しているものだし」と雄弁に語る。その姿は『バチェラー』で見せた、しおらしさとは真逆の強さがあった。
2人の交際がいつ頃終わったのかは分からない、蒼い恋の炎がなぜ鎮火したかも分からない。ただ蒼川の闇は、久保の想像を超えるほど深く、濃い色に包まれていたと思う。彼女は美貌を備える。ゆえに願えば、凡人よりも容易く願いが叶う。叶うという事実は、更に欲望の濃度を深める、それは罪となり自身を苦悩させる。久保という他人が羨むパートナーを得ても、満ちることがない業が蒼川にはあったのだろう。
世界をまたにかけ”真の愛”を探したバチェラー久保。しかし、”真の愛”で蒼川愛の心を赤く染めることはできなかった。