芸能

大杉漣さんなど「脇役」の重要さとその歴史

大杉漣さんなど「脇役」の歴史を振り返る

「大杉漣さんの突然の訃報には本当に驚きました。なぜなら、娘が“脇役”人生を歩くきっかけを作ったのは大杉さんだったのだから…」

 そう声をつまらせながら語るのは、2008年8月に亡くなった女優、深浦加奈子さん(享年48)の母・京子さん。深浦さんは『家なき子』(日本テレビ系)、『ナースのお仕事』(フジテレビ系)、『ショムニ』(同)など人気ドラマの名脇役として唯一無二の存在感を放っていたが、大腸がんを患い、5年間の闘病の末、この世を去った。そんな深浦さんは、もともと『第三エロチカ』というアングラ劇団の看板女優だった。

「1989年に“もっと広い世界で演技をしたい”と『第三エロチカ』を退団した後、初めての仕事が大杉さんに誘われた舞台だったんです。その作品で、助演女優賞を受賞したことが、加奈子の脇役人生の第一歩でした」

 2月21日、急性心不全で急逝した大杉さんと深浦さん。奇しくもふたりは、“死”によってその功績に大きな注目が集まることとなった。

 生前は主役のスターたちを輝かせ、本人にスポットライトが当たるのは亡くなったとき。いわば“日陰の存在”でもある脇役の人生とは、いかなるものなのか──。

◆キャメラなんて、大部屋に関係あるか!

 大杉さんは名脇役として輝くと同時に、映画『蜜のあわれ』などで主演を務めたこともある。しかし、日本の映画界では長らく“脇役は一生脇役”が定石だった。60年以上、京都の東映撮影所で“斬られ役”と呼ばれる時代劇の脇役を演じてきた福本清三(75才)が言う。

「親戚の米店を継ぐのがどうしても嫌で、映画なんか1本も見たことがないのに、15才のときに撮影所に入りました。当時、わしらは日雇い労働者みたいなもの。朝5時に集められてその日の役を割り振られました」

 1960年代、日本映画は全盛期で、福本ら脇役は5~6本の掛け持ちが当たり前。撮影が終わるのは深夜だった。

「撮影所の大きな部屋に敷いてある布団に雑魚寝して、また翌朝役が割り振られるという繰り返しでした」(福本)

 中村錦之助、市川右太衛門、片岡千恵蔵ら名だたるスターたちに斬られ、殴られ、殺される日々。撮影所の大きな部屋で寝泊まりすることから、福本ら脇役は“大部屋俳優”と呼ばれた。

「当然、台本なんてもらえない。そのうえ、『キャメラの位置はどこですか?』と助監督に聞くと『キャメラなんて、大部屋に関係あるか!』と怒鳴られる。物乞いから殿様までいろいろな役をやったけれど、どの映画に出ていたかなんて、全く覚えていません(苦笑)」(福本)

 映画評論家で『映画のキャッチコピー学』の著書がある樋口尚文氏が解説する。

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン