芸能

大杉漣さんなど「脇役」の重要さとその歴史

 2000年代に入ると、脇役が脇役のまま、主役に躍り出る「スピンオフ作品」が数多く制作されるようになる。ドラマ評論家のペリー荻野氏が言う。

「その代表例が、『警部補 矢部謙三』。阿部寛さん・仲間由紀恵さん主演の『トリック』(テレビ朝日系)で脇役の警察官として出演した生瀬勝久さんを主演に置いて人気を博したスピンオフ作品です。意地悪な警察官だと思っていた矢部に意外とかわいらしい部分があるなど、視聴者が脇役の持つ面白さや幅広さに気づいたのです」

 この作品をきっかけとして、ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の『交渉人 真下正義』や『相棒』(テレビ朝日系)の『鑑識・米沢守の事件簿』など、スピンオフ作品が次々と生まれた。

 同時に、ドラマの中でキラリと光った脇役たちが、やがて主役の切符を手にするケースも増えた。例えば、木村拓哉(45才)主演のドラマ『HERO』(フジテレビ系)に脇役として出演していた吉田羊は『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』(フジテレビ系)で、松重豊(55才)は『孤独のグルメ』(テレビ東京)でそれぞれ主演の座をつかんでいる。その理由を、ドラマ評論家のペリー荻野氏はこう分析する。

「ネットテレビや深夜枠など、ドラマの本数が増え視聴者も、下積みや豊かな人生経験に基づいた脇役の演技を求めるようになったのでしょう」

 昔のように放映されるドラマの数が限られており、リアルタイムでしか見ることができなければ別だが、今は数多の作品があるうえ、録画して見ることもできる。

「格好いい、かわいいだけの若手を主役に置いて“ありがたや”と言いながら撮影したドラマよりも芸達者な脇役たちが作り上げるドラマがこれまで以上に求められているのでしょう」(ペリー氏)

“芸達者な脇役の演技を心ゆくまで堪能したい”そんな視聴者の気持ちに応えたドラマの“究極”が、大杉さんの遺作となった『バイプレイヤーズ』(テレビ東京)だった。

 大杉さんを筆頭に、松重、遠藤憲一(56才)、田口トモロヲ(60才)、光石研(56才)ら名脇役たちが集まって共同生活を送る同番組は、続編まで作られるほどの人気を博した。視聴者の需要に加え、SNSの発達も脇役人気の一因だ。

「昔はドラマに脇役がチラっと映っても、どこの誰か、他にはどんな作品に出ているのか、調べようがなかった。だけど今はネットですぐに検索できるうえ、お気に入りの脇役の魅力について拡散することも簡単です。そのため、脇役の人気にも火がつきやすく、認知されやすい時代になったのだと思います」(ペリー氏)

※女性セブン2018年3月22日号

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