脳内科医で小児科専門医の加藤俊徳さんは、平昌五輪での若き選手たちの活躍を見ながら、「子供の才能を伸ばすには、親ができるだけポジティブな思い出を残すことが大切。子育ては、これにつきる」と、確信したという。
「医師として、これまでたくさんの子供たちと接してきたことはもちろん、私自身の体験からも、幼少時代の記憶は脳を作る上でとても重要です。インタビューなどを聞いていると、メダリストはみな、子供時代に、親との楽しい思い出を持っている。その思い出が人生で困難に陥った時に蘇り、立ち上がる力になるのです」(加藤さん・以下同)
そのよい例が、日本のメダル第1号となった、フリースタイルスキー・モーグル銅メダリストの原大智選手(21才)や、スノーボード男子ハーフパイプの銀メダリスト、平野歩夢選手(19才)だという。
◆子供との思い出は時間の長さより質
「原くんは小学6年生からモーグルのスクールに通い始め、新潟県湯沢のゲレンデまで、父の勇樹さん(54才)が車に乗せていくと、インタビューで答えていました。また、平野くんは、父・英功さん(46才)が息子を全力でサポートするために800万円もの借金をして、スノーボード施設を造ったそうですが、おそらく彼らは、練習の行き帰りなどに、両親やきょうだいと過ごした時間が楽しかったと思うんです。その記憶が、なかなか成績が出ない時の自分を支え、頑張り続ける力になって、今日の活躍につながったと思います」
スポーツに限らず、アート鑑賞など、親が見たい、行きたい世界に子供をどんどん連れ出し、ともに楽しむことも大切だ。
◆どんなときも子供を認める
楽しい思い出とともに、認められた経験も大切だと加藤さんは言う。
「スピードスケートで金メダルを獲った小平奈緒選手(31才)は、金メダル獲得後の会見で、家族に伝えたいことを聞かれて、“よかった時も悪かった時も、認めてくれたことを感謝したい”と語っていました。成功している人の話を聞くと、彼らに共通しているのは、“変われる人”ということです。
小平さんは前回のソチ五輪ではメダルを獲れなかった。その後、オランダに武者修行に行き、別人になって帰ってきて、平昌で見事に金メダルを獲ったわけですが、なぜ、彼女が変われたのか、ぼくは先の彼女の言葉を聞いてわかりました。くじけそうになった時に“どんな時も家族が認めてくれた”記憶が蘇り、“今回も自分は大丈夫”と思えたからだと思ったのです」
楽しかった思い出が記憶され、将来、困難にぶち当たった時に蘇り、助ける力になるのだ。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号