佐藤:2015年8月の戦後70年談話(注1)でも公明党への配慮がうかがえます。1995年の村山談話で「遠くない過去の一時期」に国策を誤ったとあえて歴史の分節を曖昧にした。一方安倍首相は「満洲事変」で進むべき道を誤ったと語った。では「満洲経営」を主導した岸信介の責任をどう考えるのか。
【注1/戦後70年談話/2015年8月14日、戦後70年の終戦記念に安倍晋三首相が発表した談話。戦中の行いについて「反省」や「おわび」を示しながらも、「戦争には何ら関わりのない子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とした】
片山:安倍首相は、祖父の岸信介を尊敬していると常々語っていますからね。
佐藤:安倍談話はこれまでの自分の考えが間違っていたと反省したと捉えることもできる。しかしそれでは政治家としての信念を問われかねない。あるいは公明党に忖度して自分の考えとは別の発言をしたとも考えられる。それでも政治家としての誠実性を問われる。
片山:その節操のなさが安倍首相の安倍首相たる所以でしょう。中曽根康弘首相は風見鶏と言われましたが、中曽根的な権謀術数を超越して、安倍首相の場合は整合性を完全に放棄しているかのようにも感じられる。
佐藤:いずれにしろ戦後レジームからの脱却を目指していた安倍首相が戦後レジームを追認した談話だった。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
※SAPIO2018年3・4月号