ジャーナリストの前川惠司氏
論旨がよくわからないことはさておき、単純な韓国観が嫌韓感情を生んだのではない。事実に基づかない執拗な日本叩きだ。そうした自己中心的な韓国社会の実相を、日本社会が朝日新聞以外のメディアの報道で十分に知ったからだ。むしろ複眼化したためだ。
コラムは、高級官僚が安倍首相をほめあげる日本は、金正日を持ち上げる北朝鮮と変わりないとの、「韓国の知日派の重鎮」の言葉で結んでいる。議会制民主主義国家と北朝鮮の独裁体制を同一視する単純さは驚きだ。昨年12月に韓国政府が日韓合意の検証結果を発表した。朝日新聞社説(12月28日)はこう論じている。
〈一方、日本政府の努力も欠かせない。政府間の合意があるといっても、歴史問題をめぐる理解が国民の胸の内に浸透していくには時間がかかる〉〈さらに日本政府にできることを考え、行動する姿勢が両国関係の発展に資する〉
何が日韓摩擦をもたらしたのかとの、自らの報道姿勢への反省なく政府の努力を求めても、説得力はない。しかも、現在の韓国の反日は、国民をまとめる唯一の手段、国民統合の象徴だ。慰安婦像がある日本大使館前の集会に小学生を連れていき、中学生には、「慰安婦問題は解決していない」と明記した教科書を与え、反日を再生産し続ける教育現場。反日に左派も右派もなく、「親日」は存在してはならない不文律だ。いまや反日は、韓国社会の“思想”と化している。
日韓メディアの合同調査で、日本人の嫌韓は折々の動きにつれて好転、反転するが、韓国人の嫌日は一貫して50~80%を維持しているのは、だからだ。そうした国に“できることを考えて行動”するとは具体的に何をすべきなのか。それを明示してこそ論説だ。
朝日新聞の報道や論説の大きな誤りは、日本と韓国の社会や価値観、歴史の違いを直視せず、一方で自分たちの価値観、韓国観を日本社会に押し付けようとする、傲慢な姿勢だ。2011年5月から2013年1月まで主筆を務めた若宮啓文氏(故人)は2005年3月27日のコラムでこう書いた。