◆女医なら3万人死亡者減
4%という数字は決して小さくない。論文執筆者で『「原因と結果」の経済学』(ダイヤモンド社刊)の著書もある、医師の津川友介・カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授が語る。
「4%というのは、過去10年間の医学界における死亡率の改善とほぼ同じレベルです。臨床において、日々、新しい薬や医療機器が開発されていますが、それらを全部合わせて10年蓄積した分と同じですから、臨床的にも意味のある数字だと考えます。論文の前提に立って、もし男性医師が女性医師と同程度の医療の質だったとしたら、全米で死亡者数を年間約3万2000人減らせる計算になります」
しかし、なぜ女医のほうが、死亡率や再入院率が低くなるのか。津川氏が解説する。
「調査結果からは、女性医師のほうが男性医師よりも“リスク回避的”であることが分かりました。臨床ガイドラインとエビデンス(根拠)に基づく診療を忠実に守る傾向が強かったのです。
さらに、予防医療により多くの労力をかけており、コミュニケーションスキルも高い。患者さんの話をよく聞くこと、周りの医師にも相談することで、より慎重かつ個々の患者さんに適した治療が選択されているのだと思います」
こうした女医の細やかなケアが、高齢者の“異常”を上手く拾い上げた、と見られている。