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桜のにおい成分にリラックス作用、抗菌作用も期待

医療現場でも使用されている桜アロマ

 満開に咲いた桜の木々の下で、10万人を超える老若男女が宴に酔いしれている。3月末の日曜日、東京・上野公園は昼夜通じて花見客でごった返していた。

「日本に住んでいてよかったと思う瞬間ですよね。風情ある桜が、こんなにも身近にあるんですから。いや~日本最高! 桜高!!」

 家族4人でお花見に訪れたという都内在住のビジネスマン(42才)は、ほろ酔い顔で破顔した。日本気象協会によれば、今年の桜前線は平年よりやや早く北上しており、4月2週目から東北、同下旬には北海道で満開を迎える見込みだ。

 この日、同じく上野公園で職場の仲間と花見を楽しんだパート主婦のAさん(45才)は、桜の下で、不思議な感覚を味わったという。

「どこか落ち着くというか、日頃の嫌なことを忘れてリラックスできる自分がいるんです。毎年、お花見をした夜はぐっすり眠れるし。これも桜の力なのかしら?」

 半分冗談気味に話す彼女だが、実はその通り。桜の香りには、れっきとした“健康エキス”が含まれている。医療現場でアロマセラピーを導入する貝塚病院(福岡県)の麻酔科医・松下至誠先生が語る。

「桜のにおい成分『クマリン』と『ベンズアルデヒド』によるものです。あの桜特有の甘い香りは、体の副交感神経に働きかけ、精神をリラックスさせる作用があります。抗菌作用も非常に高く、医学界でも注目の成分なんです」

 クマリンとベンズアルデヒドは主に桜の葉や花の中に存在し、すりつぶしたり塩漬けにすることでより醸成される。

「当院では、桜のにおい成分を『低温真空抽出法』という手法によって抽出し、アロマオイルにして使用しています。リラクセーションを目的に患者さんに提供しており、『頭痛が改善した』という声も多くあがっています」(松下先生)

 さらに松下先生は、がん患者と慢性痛患者に桜のアロマを利用した芳香療法を実践したところ、痛みやつらさの緩和が認められたという。

「使用したのは八重桜です。桜アロマを常用していたがん患者の中には、亡くなる直前まで通常食を食べられたかたもいました。また、唾液の抗酸化能を向上させ、ストレスの原因となるホルモンのコルチゾールを減少させることも最近わかってきました。桜のにおいで認知症の改善や夜のせん妄が治まるという印象もあります。まだ確固たる科学データはないですが、いずれも臨床現場で私自身が実感した話です」

 桜アロマを利用した医療現場では、患者だけでなく家族の精神を安定させることもできたという。日本人が古来、愛でてきた桜は、美しいだけでなく心と体を健康にする“良薬”にもなっていたのだ。

※女性セブン2018年4月19日号

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