新学期が開始する9月1日に子供達の自殺が増えることを見越したものだったのだが、今でもこうして思い出せるほど同図書館は「子供達に優しい図書館」「いいことを言う大人が勤務する図書館」というイメージをこの一発のツイートにより醸成することができた。同図書館はネットでウケることを企図しておらず、あくまでも自殺の多さに心を痛めああいったツイートしたのだろうが、狙ってやるのならばわざわざ競争相手の多い日にやる必要はない。
エイプリルフール企画の話に戻るが、効率の問題に加え、単純に「寒い」ことが多いのである。企画段階では大盛り上がりだろうが、予想外に企画が滑った場合の担当者の心の持ちようを考えると、あまりにも危険な企画である。そのため数多くのサイトにかかわった私自身、エイプリルフール企画はやったことはない。
バスケ・Bリーグのレバンガ北海道は雑誌風ニセコンテンツを作った。その中には“2人の男性選手同士が熱愛発覚!”という記事があり、これを紹介するツイートでは「一部週刊誌に報道されました件につきまして、両選手からは『相手は仲の良い友人の一人』と聞いております」とあった。面白い! と高く評価する声も多数あったが、同性愛者差別の意図を感じた人もいたようで、同チームのツイッターには抗議が多数寄せられた。さらには、当の同性愛者からこうした批判をして問題化するのにはうんざり、といった声も出た。
ジョークのセンスがない人がエイプリルフール担当にさせられたのであれば、それこそ「逃げてもいいんだよ」とその人に言ってあげたいぐらいである。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2018年4月20日号