国内

高齢化するひきこもり、親により外部との接触断たれるケースも

「8050問題」親によって外部との接触断たれる人も

 内閣府の調査(2016年)によれば、日本のひきこもり人口はおよそ54万人。昨今、ひきこもりの長期化で親子共々高齢化し、80代の親と50代の子供が暮らす世帯が社会から孤立し、生活に困窮する「8050問題」が深刻化している。

 国のひきこもりへの対応にも問題がある。内閣府が2010年に初めて実施した実態調査では、ひきこもり該当者は約69.6万人だったが、2016年には約54.1万人と15万人も減少した。しかし、この調査はひきこもりの対象年齢を39才までとしている。単に高齢化したひきこもりの人々が、調査対象年齢から外れただけなのだ。

 今年度からようやく40~59才の中高年も対象に加えて実態調査を開始し、就労支援の上限も44才までに拡大される。これまで、ひきこもり当事者が行政に就労支援を仰いでも、「対応できるのは39才まで」と門前払いされ、途方にくれるケースも多かったという。NPO法人・自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連さんが話す。

「行政に頼れずどこに相談すればよいかわからないため、何年も問題を放置し続け、生活が窮地に追い込まれてやっと、本人や親が相談してくるケースが多いのです」

 20年近くひきこもり続けている50代の娘を持つ、A子さん(81才)もこう語る。

「昨年、夫が他界しました。これまでは夫の年金で何とか生活できましたが、今後はわずかな貯金だけで賄っていかなければなりません。娘は大学を卒業後、一度はメーカーに勤めたのですが、すぐに人間関係のトラブルで退職、その後派遣でいくつかの会社を転々としましたが、どれもうまくいかず、ひきこもってしまいました。

 娘が30代の頃は、いつかは働いてくれるだろうと社会復帰を信じていましたが、40代になった時、夫の定年を機に何とか働いてくれるよう説得したんです。娘も、気持ちを奮い立たせて重い腰を上げてくれたのですが、既に手遅れでした。就労支援は期待できず、雇ってくれる会社は皆無。

 せっかく一念発起したのに出鼻をくじかれて、娘の落ち込みようは見ていられなかった。私が『頑張れ』と言いすぎてしまったことも、結果的に娘を傷つけてしまったのかもしれません。

 それから10年経ち、今度は夫の他界です。私たち家族ができることは、もうないのでしょうか…」

◆親は“精神的虐待”で子を縛る

 一方で、ひきこもり当事者もひっ迫した苦しみを抱えている。千葉県に住むB子さん(42才)が語る。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト