「18才の頃からひきこもるようになり、もう30年近く経ちます。きっかけは大学受験に失敗したことでした。小さい頃から、親の期待に応えるため、勉強や習い事を必死でやりました。でも、いつも満足のいく結果は出せなかった。
第1志望の大学に落ちた時、『何をやっても自分はダメなんだ』と思うと、何もかも頑張れなくなってしまって…。挫折感でいっぱいでした。物に当たるようになり、母に暴言を吐いたこともありました。両親は、私の存在を世間に知られたくないようで、無断で外には出られませんし、携帯やお金も持っていません」
『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』(講談社現代新書)の著者で、ジャーナリストの池上正樹さんによれば、B子さんのように親によって外部との接触を断たれる人は多いという。
「子供のためといって、携帯やお金を渡さない親を見かけますが、これは自分のためであり、目に見えない“精神的虐待”ともいえます。根底にあるのは、“お金をあげたらどこに行くかわからない”“携帯を持つと事件を起こすかもしれない”という子供への不安に他なりません。子供は自分の存在を世間から隠されていることを知り、ますます動けなくなる。無意識に親の気持ちをくむようになり、ひきこもりの長期化へとつながるのです」
家族だけでなく、社会の対応や取り組みも大切だ。厚生労働省は、ひきこもり支援の充実のため、新たに13億円を来年度予算案に計上した。自治体やNPO団体が、ひきこもりの人の自宅を訪問し、家族や本人から聞き取りを行い、適した仕事をマッチングしていく予定だ。
京都府にあるNPO法人「若者と家族のライフプランを考える会」の河田桂子代表が語る。
「40~50代になり、突然社会復帰しようとすると、失敗して逆にひきこもりが悪化することもあります。私たちは、まずは自分の興味のあることから始めて、社会とのかかわりを少しずつ持ちながら、徐々に社会復帰できるよう支援する取り組みを行っています」
同会の支援を受けひきこもりを克服したC子さん(50才)が話す。
「大学を出て、10年程仕事をしていましたが、職場で大きなミスをしたのをきっかけにうつ病になりました。でも、親の介護が必要になり、とうとう自分が働かなくてはならなくなりました。そんな時、大好きな絵を描くことから始めてみませんか、と声をかけていただいたんです。絵を通じて社会とつながることができ、一歩踏み出せたと感じています」
※女性セブン2018年4月19日号