◆ライバルが不在である
「SUVが人気でよく売れる」ことによって、「何かがあまり売れなくなる」という状況も見てとれます。日本でいえば、それがセダンと言えるでしょう。クルマのうしろに独立したトランクを備えるセダン。クルマの基本形で、最もフォーマルな印象を与えてくれるクルマです。
かつて、日本の自動車市場で、最もたくさん売れたクルマはセダンの「カローラ」でした。ところが2000年代に入ると、販売ランキングトップの座からセダンの「カローラ」は転げ落ちます。そして、セダンの売り上げは、トヨタに限らず、どのメーカーも徐々に悪化。売れないために絶版になるセダンが続出します。
気づけば、いつの間にか日本国内で販売されるセダンは激減していました。また、コンパクトではないミドル・サイズ以上のハッチバックの人気も低迷します。さらにステーションワゴンやスポーティタイプのクーペも、あまり売れません。売れているのは、コンパクトカーかミニバンか、それとも「プリウス」といった限られたクルマたち。
売れないジャンルは、「人気がない」→「お金をかけて新しいクルマを開発しにくい」→「クルマの魅力が弱まる」→「さらに人気が落ちる」という負のスパイラルに陥ります。
そうした状況で、コンパクトカーやミニバン以外が欲しいという人が市場を見渡せば、目に飛び込んでくるのは、当然、トレンドで数が多く、クオリティも高いSUVとなることでしょう。
SUVというスタイルが本来持っている魅力。トレンドのクルマとして、競争で磨かれた高いクオリティと充実した車種。そしてライバルの不在。この3つの理由によって、現在、日本ではSUVの人気が高まっているのではないでしょうか。