ライフ

ニュータウンの末路 希望持てる街と廃墟化する街の差異は

多摩ニュータウン(時事通信フォト/朝日航洋)

 日本が経済成長を遂げた1960年代から1980年代にかけ、住宅需要の急激な高まりから全国各地に造成され、人気を博した「ニュータウン」。だが、街や人の高齢化に伴い、その役割は薄れつつある。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がニュータウンの現状を報告する。

 * * *
「また抽選に外れてしまった」──。そう言って、お父さんががっくりと肩を落とす。それを見た家族が暗い顔になる。それは今から40年以上前に、日本中のどの街でも見られた情景だった。

 1960年代から1970年代の高度成長期。日本の住宅は絶対数が不足していた。政府は都市の郊外へ新たな鉄道路線を敷き、新駅を作り、その周りに勤労者用の集合住宅を建設する政策を進めた。いわゆる「ニュータウン」の造成である。

 大規模なものとしては、関西圏では1960年代に千里ニュータウンの開発が始まった。首都圏における多摩ニュータウンは1970年代が開発の最盛期ではないか。

 ニュータウンは人気を集めた。その分譲住宅には申し込みが殺到。何十倍という抽選になることも珍しくなかった。先着順で募集すると、何日も前から行列ができた。都会を職場とするサラリーマンにとって、ニュータウンに住むことは憧れ以外の何ものでもなかったのだ。一種のニュータウンブームと言っていい現象。それは10年以上も続いたのではなかろうか。

 終息したのは、1980年代の半ばかと思われる。総務省が行っている「住宅・土地統計調査」によると、総住宅数が総世帯数をはっきりと上回ったのは1973年から。空家率が5%を超えたのも同じ時期。終戦直後は圧倒的に不足していた住宅数が、その頃から数の上では「足りている」状態となった。

 しかし、大都市居住者の住宅への飢餓感まで満たしてくれる状態ではなかった。ニュータウンで集合住宅が分譲されると、申し込みが殺到する状態は1980年代の前半まで続く。

 もちろん、今でも「ニュータウン」と呼ばれる街での分譲で、抽選になるケースはある。しかし、かつての熱狂とは程遠い。人気の物件、住戸に申し込みが集まる程度。「住宅への渇望」といった情景ではない。

 あの熱狂が終わって30年以上が経過した。現在、ニュータウンが何かの話題になるとすれば「廃墟化への危機」ではないだろうか。住む人が少なくなった築40年以上の集合住宅は、今や文字通り廃墟化の危機を迎えている。なぜ、そんなことになってしまったのか?
問題を整理しよう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン