その堤にしろ森にしろ、「土地神話」に導かれた“バブル経済大国ニッポンの申し子”だ。1986年に始まったバブル景気は、フォーブスが1回目の番付発表をした1987年がピークで、1989年には三菱地所がロックフェラーセンターを買収するなど1991年まで続いた。
そんな時代の象徴だった堤を抜いて1995年のトップに躍り出たのが、「ウィンドウズ95」を引っさげて登場した“IT大国アメリカの申し子”ビル・ゲイツだ。それが“アメリカ大富豪復活”の狼煙、日本の“失われた10年ないし20年”の始まりなのだ。
フォーブスが発表に使う数字は2月時点の資産総額だが、今年は2月5日にNY株式市場(ダウ工業株30種平均指数)で史上最大の下げ幅1175ドルを記録、同誌は「ダウ急落で、“投資の神様”バフェットら米富豪6人の資産合計が1日で200億ドル超減少」と報じた。当日は1ドル=108~109円なので2.2兆円減になる。
フォーブスは、「リアルタイム・ランキング」も発表しており、2月16日現在、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスがビル・ゲイツを押さえて暫定トップに立っているが、日本人の伏兵は現れるのか。株価に左右されるアメリカのIT長者の資産と、土地バブル崩壊後、低迷する日本勢の資産のランキングは、今後の日米双方の経済の勢いを占うものとなるだろう。
●じょうじま・あきひこ/1946年三重県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。東宝を経てソニー勤務時代に書いた短編小説『けさらんぱさらん』で「オール讀物新人賞」(第62回)受賞。著書に『吉田松陰「留魂録」』(致知出版社)、『ソニーを踏み台にした男たち』(集英社文庫)、『「世界の大富豪」成功の法則』(プレジデント社)など多数。
※SAPIO2018年3・4月号