もちろんこのドラマ、セクハラ財務官僚のようなゲスないやがらせ、ハラスメントをする人々を描いているのではありません。黒澤部長も牧も真剣に人を好きになり、それがゆえに生じる葛藤を秀逸なコメディに仕上げています。
ただし、「迫ってくるオッサンと追いかけられる部下」、「好きでもない相手から性的対象にされる不気味さ」、「権力を持っている相手だから簡単に拒絶できない」といった構造のみを抽出すると、まさしく今世を騒がせている「セクハラ+パワハラ」の構図に重なります。
一般的に男女間にて発生することが多いセクハラ。ですが、このドラマでは迫る方も迫られる方も男。だからこそ、教育的素材になりうる。世の男性たちは、とまどう主人公・春田の立場に自分を置きかえみればすぐに、「セクハラ+パワハラ」をリアルな「自分コト」として捉えられるはず。セクハラ財務官僚の言動がいかに不快であるかが実感としてわかるはず。
残念ながら、日本社会はセクハラ問題の本質について理解が非常に乏しいのは事実。とんでもない暴言がいまだ政治家等から発し続けられていることからも明白でしょう。ということで、セクハラ問題に無理解な方々への「教育素材」としても、『おっさんずラブ』はドンピシャ機能します。この時期、連続ドラマとしてスタートしてくれたのもナイスタイミング!
実は2016年に単発のスペシャルドラマとして放送され好評ゆえの連続ドラマ化だそうですが、超優秀な「官僚の中の官僚」と呼ばれる方々、ちょっとでもこのドラマを見て学んでおけばよかったのに。
エリート中のエリートとか言われてムダに学歴だけは高いけれど、世俗から学ぶ、という「頭の良さ」が皆無な点がザンネンです。特に「相当認識が高いと思いますよ」とか自己評価を誇っていらっしゃる財務官僚さん、ぜひ土曜日深夜の『おっさんずラブ』にチャンネルを合わせて、これからでも深く学習されんことをオススメいたします!