芸能

田中圭『おっさんずラブ』は財務官僚こそ見るべきドラマ

演技派たちが熱演(番組公式HPより)

 ドラマはある意味、社会を映す鑑である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所の山下柚実氏は、セクハラ・パワハラに揺れる今こそ見るべき作品として、土曜の深夜ドラマを挙げた。

 * * *
 最近、勢いのある深夜帯のドラマ。まだ始まったばかりだけれど、傑作の一つに挙げたいのが『おっさんずラブ』(テレビ朝日系土曜23時15分)です。軽やかでポップで可笑しい。役者たちがノッていて楽しんで演じていることが伝わってきてワクワクする仕上がりです。

 テーマは「おっさんの純愛」「男同士の三角関係」。ちょっと異色だけれど、今の世の動きとつなぎあわせて味わってみるとさらに深い。絶妙なるそのテーマ性、ドラマがスタートしたタイミングも含めて、その“教育効果”に唸ってしまう。

 主人公は、モテないサラリーマンの春田創一(田中圭)。今ひとつぱっとしない凡人男で、結婚願望はあるけれど、恋人無し。しかし、その春田がある日突然、ストレートに告白されてしまうのです。

「好きです!」

 自分にむかって叫んでいる相手は、なんと敏腕上司の黒澤部長(吉田鋼太郎)。いきなりオッサン上司に迫られ、とまどい慌てる春田。

「乙女心を隠し持つオッサン上司」である黒澤部長は、まるで瞳の中にバラが咲いていそう。ねっとりした瞳で春田を見つめる。写真を隠し撮りしたり、「ランチミーティングしましょう」と誘ったり。春田の気持ちなんて関係なく、バラの花束を差し出しての愛の告白……よく言えばピュア、悪く言えば粘着質。そんな黒澤部長を吉田剛太郎さんがこれ以上ないほどのハマり役で演じていて、輝いています。

 一方、黒澤部長にライバルも出現。イケメン後輩の牧凌太(林遣都)は、黒澤と競いあい、春田のハートを奪い合うことに。その牧のキャラは黒澤部長と対照的。もの静かで真面目で爽やかでイケメン。しかし、実はドSで情熱を秘めている。黒澤と対比させるようにして牧のキャラクターを林遣都さんが活き活きと演じています。

 そして第一話の終わり、シャワーを浴びる裸の春田に迫る牧。いきなりその唇を奪う衝撃シーンで幕を閉じて話題沸騰。何よりも、主人公・春田を演じる田中圭さんのてんやわんやぶり、慌てぶりが可笑しい。

 ビクビク動揺し、狼狽し、心の中で叫ぶ。小心者・春田のいじらしい挙動。もう、腹を抱えて笑ってしまう。……という優れたコメディドラマですが、敢えて今の世の出来事と重ねて見てみると、また別の味わいがにじみ出してきます。

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト