──田中さんはきっぱりギャンブルから足を洗うまで回復したそうだが、いまは年に1回も競艇や競輪に再び行ってみたいという気にならないのか。
田中:なりますよ。今でも競艇や競輪に行きたくなることはありますし、麻雀ぐらいならいいかな、という気持ちになることもあります。
仮にいま行ってもすぐに依存症は再発しないとは思いますが、3回行ったらまた発症して昔よりもっとひどくなる自信はあります(笑い)。1回目は自制して5000円でやめられると思いますが、すぐにあのヒリヒリした感覚を思い出してしまうでしょうね。
いくら回復プログラムをやり続けても、ふと魔が差して体が後ろに引っ張られてしまう。その力の大きさこそが依存症の恐ろしさだとつくづく実感しますし、この国民病ともいえるギャンブル依存症の対策を取らないまま新たにカジノなどができれば、さらなる悲劇を生むことになるでしょう。
●たなか・のりこ/1964年東京生まれ。昭和女子大短大卒業。デパートや弁護士事務所に勤務。ギャンブル、買い物依存症になった経験から、2010年、依存症問題を抱える家族を支援するカウンセラーになる。2014年「ギャンブル依存症問題を考える会」を立ち上げ代表に就任。現在は依存症予防教育の重要性も説き、全国の学校や企業などで積極的に講演活動も行っている。著書に『三代目ギャン妻の物語』(高文研)、『ギャンブル依存症』(角川新書)がある。
■撮影/内海裕之(田中氏)