もはや国民病ともいえるギャンブル依存症


──ちなみに、田中さんのギャンブル歴で一番大勝ちした金額は?

田中:じつは海外のカジノでも80万円程度しか勝ったことがなく、たいしたことはありません。競艇でも40~50万円がいいところで正確に覚えていないぐらい。よくビギナーズラックが忘れられなくて……という人は多いですが、そんなことばかりでもないんです。

 思い返せば、大勝ちしたときの快感というよりも、ヒリヒリするようなスリルを楽しんでいたような気がします。ドキドキ、ハラハラ、ホラー映画好きみたいな感じを味わっているうちは、煩わしい事を考えなくて済む。それがやめられない原因にもなっていたと思います。

──ただ、依存症がいくところまでいってしまうと、それこそ新聞沙汰になるような取り返しのつかない事件に発展するケースもある。

田中:多重債務で家族まで巻き込んでお金がまったくなくなってしまうのがもっとも多いパターンです。これだけでも周りの人が聞いたら悲惨でしょうが、もっと進んでくると、窃盗や万引きといった事件を引き起こす人もいます。

──ギャンブルによる借金苦で自殺する人もいる。

田中:金融庁が行なった調査(2016年)では、多重債務が原因とみられる自殺者数は1年間で約600人もいました。

 いま、私が立ち上げた「ギャンブル依存症問題を考える会」には、全国で約300名が依存症者のサポートや依存症という病気に対する認知度向上の啓発活動などを行っていますが、そのうち95%は依存症者の家族です。当事者はなかなか変われないから、まず家族を救い上げるのが依存症回復のセオリーなんです。しかし、毎年3人ほど当事者が自殺してしまう現実もあります。それだけ依存症を回復させるのは難しいことなのです。

──田中さん夫婦は、こうした自助グループ(グループセラピー)に通うことで依存症から回復できたとか。

田中:はい。自助グループは匿名で参加してもよく、グループ内でお互いの話を聞き合うのが大きな特徴です。

 依存症の回復プログラムは、孤独感や自尊心の低さ、生きづらさがギャンブル依存症に大いに影響していると考え、日常生活の悩みも他人にすべて打ち明けます。そして、「自分はありのままでいいんだ」「生きていることには意味があるんだ」と、自分で自分を受け入れられるようになることが最終目的です。

 もちろん、最低最悪のギャンブル経験も話します。ただ、自分の体験だけでなく、同じような問題で困っている人たちの手助けをすることで、ろくでもない経験も意味があって活かされると受容できるようになる。他人に話して役立てる。そこから徐々に依存症の回復へと繋がっていくのです。

──しかし、田中さんはギャンブル依存から抜け出した後、今度は買い物依存症になってしまったとか。

田中:そうなんです。ギャンブルに行っていた時間に買い物をするようになり、それが次第にエスカレートしてネット通販にはまってしまいました。フリーマーケットで着もしない掘り出し物のブランド服を買い漁り、それをネットで売ったりして……。

 クロスアディクションでいくつも依存症を持っている人はたくさんいます。依存症にはアルコール依存や薬物依存、恋愛依存など様々あります。ギャンブルをやめられても、家族と一切会話をせずに1日中引きこもってゲームをするゲーム依存症の方などもいます。

 こんな事例もあります。アルコール依存でDVもひどかった男性が自助グループにつながって断酒に成功しましたが、その代わりパチンコにはまってしまいました。家族は「お酒をやめたんだからパチンコぐらいはいいか」と放っておいたら、いつの間にか不動産を担保に入れられ2400万円も借金があったと。

──そう考えると、一気にギャンブルやアルコールを断ってしまうと、かえって依存症を悪化させるパターンもあるのでは?

田中:断酒もそうですが、あまりにやめられない人たちが多いから、まずは健康被害や周囲への影響を軽減させる「節酒」から始めるハームリダクションという考え方もあります。それもひとつの方法で否定はしません。とにかく家族や身近な人が依存症という病気を理解し正しい対応をとることが大事なのです。

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