「痛み」は体の不調を察知する最初の信号であり、それを正確に伝えることが、その後の診断に大きく影響する。痛みを伝える際に、意外にも効果的なのが「擬態語」だ。きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、患者の「痛み表現」を、診断の重要な指針にしている。
たとえば、腰のジンジンとした痛みは尿管結石、ビリビリは膵臓がんの恐れ、首筋から肩へギュッギュッとした痛みは狭心症や心筋梗塞の恐れがあるという。医師にとっては、受診者のこうした痛みの表現から重篤な状況に繋がる病気の発見をすることもできるのだ。
“お腹の痛み”は「どう痛むか」とともに「どこが痛むか」をできるだけ詳細に伝えることがカギになる。腹痛は「痛む部位」と「病気の原因となっている臓器」が直接的に関係するケースが多いからだ。
“ギリギリ”とした腹部の痛みを伴う病気は多いが、へそより上で肋骨より下の「上腹部(みぞおち)」に、食後すぐの不快感や胃もたれを経て痛みが生じた場合は胃炎、食後20~30分後に“シクシク”“キリキリ”と痛む場合は胃潰瘍の疑いがある。
「いずれもストレスの多い働き盛りから中高年世代が発症することの多い病気です。どちらも、前傾姿勢を取ることで痛みが和らぎますが、その場しのぎの対応をしていると日を追うごとに痛みが激しくなり、胃がんのリスクを高める可能性も出てきます」(前出・菊池医師)