これまで北朝鮮は何度も平和への約束をし、それを平気で反故にしてきた。トップ会談の「融和ショー」で、危機が去ると思うのはあまりにも早計で、日本の危機はより高まっている。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が日本の備えに警鐘を鳴らす。
* * *
「和戦」の岐路に立つ米国と北朝鮮だが、米朝首脳会談を控え、平昌五輪直前まで高まっていた緊張は緩和されて「対話ムード」が優勢になりつつある。
果たして米朝首脳会談は成功するだろうか。成否のポイントはただひとつ。3月の電撃訪中で金正恩朝鮮労働党委員長が習近平国家主席に表明した「朝鮮半島の非核化」が果たして実現するのかにかかっている。
「北朝鮮の非核化」と「朝鮮半島の非核化」とでは意味が全く異なる。後者は韓国の非核化も意味するからだ。
米軍は戦術核を韓国から撤去したと言われている。だが、米国は民主、共和のいかなる政権も核の所在を明言しない政策を堅持してきた。半島有事をにらんで、米国が核持ち込みのオプションを放棄することはあり得ない。
金正恩は中朝会談で、「段階的、同時並行な措置を講じていけば、非核化は解決可能だ」と発言している。米国が段階的に経済制裁を緩和していき、体制保全を保障すれば、その結果として非核化問題は解決するだろうと述べているに過ぎない。