驚異の粘り腰を見せている石破茂・首相(時事通信フォト)
選挙で衆参の与党過半数を失った総理大臣が退陣せず、むしろ支持率が上昇するという奇妙な状況が生まれている。党内の反主流派や野党の追及が勢いづかないなか、石破茂・首相のもとでは、この局面で“伝家の宝刀”を抜くという驚きの構想が練られているという。その裏には、ある衝撃的なデータの存在があった──。【全3回の第1回】
「進次郎幹事長」抜擢構想
土壇場の石破首相が驚異の粘り腰を見せている。
自民党内の旧安倍派、旧茂木派、麻生派を中心とする石破おろしの動きには、“辞めさせたいヤツは名を名乗れ”とばかりに総裁リコール(臨時総裁選開催)請求に議員の署名捺印を求める方針を決めて反対勢力を締め付けた。「踏み絵じゃないか」(旧茂木派議員)と反発を浴びても平気の平左、「他にいい人がいない」という消極的理由で支持率が回復しているのを奇貨として完全に居座りを決め込んだ。
「オレは後ろから鉄砲撃たれるのには慣れているんだよ」
これまで旧安倍派にさんざん批判されてきた石破首相は周辺にそう嘯いているという。
石破首相にとって最大の関門は、大敗した参院選を総括する報告書が発表される9月2日に開催予定の両院議員総会だ。森山裕・幹事長は、「参院選総括後に幹事長としての責任を明らかにする」と言明しており、辞任するとの見方が強い。
森山氏は参院選後も日本維新の会幹部と会談して協力を求めるなど、衆参で過半数割れした石破政権を支える枠組みづくりに動いてきた。それだけに反石破派の議員たちは、「大黒柱の森山さんが辞任すれば石破政権はもたない」(旧安倍派議員)とそれを契機に攻勢を強める構えなのだ。
だが、石破首相には秘策があるという。
「森山さんを幹事長代行に降格させ、後任の幹事長には小泉進次郎・農相を抜擢する。この人事であれば、若い小泉幹事長を支える森山代行にこれまで通り党務を任せることができると総理は考えている。かつて安倍晋三・元首相が幹事長として指揮を執った参院選(2004年)に負けた際、責任を取って幹事長代理に降格というかたちで執行部に残ったことがある。『安倍さんと同じ』と言えば旧安倍派も文句を言えない」(石破側近)