ビジネス

IC専用改札口が増加 鉄道会社の狙いは

阿佐ヶ谷駅のIC乗車券専用改札口

「電話のかけ方」を知らない子どもが増えているという。振り返れば、全般的に通話をすることがなくなりつつあるため、家庭で電話をかけている様子をみることがないのだろう。緊急時に備えて、公衆電話の使い方を練習させたという小学生の親もいるほどだ。同じように、子どもにとって「ないもの」になりつつあるのが鉄道の「きっぷ」かもしれない。きっぷを使える場所が狭まり、役割を終えるときが近づいている様子を、ライターの小川裕夫さんがレポートする。

 * * *
 今年4月から、JR東日本は新たなサービス「タッチでGo!新幹線」を開始した。同サービスは、JR東日本が発行するSuicaをはじめJR東海発行のTOICA、JR西日本発行のICOCAといった交通系ICカードでJR東日本管内の新幹線に乗車できるというもの。

 在来線とは異なり、これまで新幹線では窓口や券売機などできっぷを購入しなければならなかった。同サービスが導入されたことにより、在来線と同じ感覚で新幹線に乗車できるようになった。同サービスを導入した狙いについて、JR東日本広報部報道グループの担当者は、こう話す。

「『タッチでGo!新幹線』は、在来線感覚で新幹線自由席を利用してもらおうという意図から始めることになりました。まだ、サービスを開始したばかりなので、対象エリアは東京駅を起点に東北新幹線は那須塩原駅、上越新幹線は上毛高原駅、北陸新幹線は安中榛名駅までです。今後、エリアを拡大するかどうかは、現段階においては様子を見ながら検討するとしかお答えできません」

 通勤・通学で毎日のように鉄道を使っていたビジネスマンや学生は、裏面に磁気情報が刷り込まれた定期券を使用していた。

 2001年にIC乗車券Suicaが登場すると、瞬く間にSuicaは普及していった。JR東日本のSuicaが成功したことを受け、JR東海やJR西日本も自社のIC乗車券を発行。JR東日本を追随した。

 現在、Suicaだけでも発行枚数は約6400万枚。Suicaが急速に普及した理由は、なによりも鉄道の乗車時以外にもショッピングや飲食などの支払いに使える、いわば電子マネー機能を搭載したことによる利便性の向上が大きい。

 Suicaが一枚あれば、外出時に財布は不要。2006年には、携帯電話にSuica機能を持たせた「モバイルSuica」が登場し、IC乗車券の普及スピードは加速した。今では、ApplePay機能も搭載。IC乗車券の進化と利便性の向上は果てしない。

 利用者にとって利便性の高いIC乗車券だが、実はIC乗車券の導入・普及は鉄道事業者の方がメリットは大きい。

 なによりも乗車券類の紙代が節約できるほか、キセルなどの防止にも役立つ。また、IC乗車券の利用が増えたことで、”みどりの窓口”をはじめとする有人窓口を削減。それが、人件費の縮減効果をもたらしている。

 有人窓口のない駅は、利用者が少ないローカル線に多く見られた。ところが、最近は首都圏でも券売機のみを設置し、有人窓口を廃止する駅も珍しくない。窓口の無人化の波は山手線にも及び、田端駅では2014年に”みどりの窓口”が廃止された。

 IC乗車券の破壊力は、それだけにとどまらない。窓口の無人化につづいて、改札の無人化にも波及している。

 中央線の武蔵境駅は、一日の平均乗車人員が約6万7000人(2016年度)を誇る。この数字は、JR東日本管内の駅で66位。決して、ローカル線然とした駅ではない。

 2013年、その武蔵境駅に駅ビル「nonowa」が誕生。それに合わせて、武蔵境駅も改良工事が施された。そして、駅ビルに直結する「nonowa口」が開設された。

「nonowa口」がこれまでの改札口と大きく異なるのは、設置されている全改札機がIC乗車券専用機になっている点だ。つまり、きっぷで「nonowa口」から入出場できない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。アルバイトをしながら日本語を学んでいた
「ホテルで胸を…」11歳年上の交際相手女性・浅香真美容疑者(32)に殺害されたバダルさん(21)の“魅力的な素顔”を兄が告白【千葉・ネパール人殺害】
佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
「秋の園遊会」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《秋の園遊会》 赤色&花の飾りで“仲良し”コーデ 愛子さまは上品なきれいめスタイル、佳子さまはガーリーなデザイン
NEWSポストセブン
(写真/アフロ)
《155億円はどこに》ルーブル美術館強盗事件、侵入から逃走まで7分間の「驚きの手口」 盗まれた品は「二度と表世界には戻ってこない」、蒐集家が発注の可能性も 
女性セブン
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
ミントグリーンのワンピースをお召しになった佳子さま(写真はブラジル訪問時。時事通信フォト)
《ふっくらした“ふんわり服”に》秋篠宮家・佳子さまが2度目の滋賀訪問で表現した“自分らしい胸元スッキリアレンジ”、スタイリストが解説
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン