IC乗車券専用改札機は多くの駅でも設置されるようになっているが、すべての改札機をIC乗車券専用にしたのは「nonowa口」が初めてのケースになった。
武蔵境駅を皮切りに、JR東日本は全改札機がIC専用となる改札口を増やしている。現在、JR東日本管内で「nonowa口」のようなIC専用改札口が設置されているのは15駅にのぼる。
「武蔵境駅のnonowa口や阿佐ヶ谷駅のDila 阿佐ヶ谷に直結する改札口は、全改札機がIC乗車券専用機になっています。だからと言って中央線で重点的にIC乗車券専用改札の設置を進めているわけではありません。利用状況を見て、IC乗車券専用改札口にするかどうかを判断し、その判断に基づいてIC専用改札機の設置を進めています」(同)
JR東日本が、IC専用改札機を導入する判断基準は判然としていない。JR東日本は利用者数だけではなく設置される改札機の数、改札口の数、駅の混雑度などから総合的に判断していると思われるが、なによりも大きな判断基準になっているのは、駅リニューアルや改札機が老朽化したことで更新といったタイミングだろう。
順次、IC専用改札機への切り替えは進められているが、すべてをIC専用改札機にしたIC専用改札口が増えれば、常駐させる駅員の数は少なくて済む。人件費の削減効果もさることながら、鉄道会社が直面している人手不足も解消する。
現在、政府や経済産業省はFinTechを活用して、キャッシュレス化への取り組みを加速させている。世界各国に比べると日本は完全なキャッシュレス後進国と言われる。
キャッシュレス最先端国・デンマークは、2030年までに紙幣と硬貨の発行を全面的に停止することを決めた。今後はデジタル通貨・オンライン決済に切り替えるという。
スウェーデンでも同様に、現金の発行停止が現実化しつつある。中国ではスマホ決済を中心に、キャッシュレス化が急速に進んでいる。
買い物や飲食店での支払いという点に関して、日本ではいまだに現金信仰が根強い。その反面、鉄道分野ではキャッシュレス化が猛スピードで進んでいる。SuicaをはじめとしたIC乗車券の台頭で、きっぷは過去のものになりつつある。
IC乗車券は鉄道業界を変え、私たちの鉄道へのスタンスを変えた。そして、その波はライフスタイルそのものを大きく変えようとしている。